株価も仮想通貨も過去最高値を更新、生成AIの猛威が眼前に立ち現れ、かつてなく資本主義が加速する時代。お金や市場経済はどこへ向かうのか? 人の体も心も商品化される資本主義の行きつく果てに到来する「お金の消えた経済」。その驚きの未来像を描き出す経済学者・成田悠輔さんの『22世紀の資本主義 やがてお金は絶滅する』の第1章から、一部抜粋してお届けします。

22世紀の資本主義 やがてお金は絶滅する

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寓話:合法ぼったくり時代、あるいはブランドが世界を食べる

 ココ・シャネルはかつてこう言った。「ラグジュアリーとは必需品が終わったところで始まる必需品である」。ラグジュアリーなポジショントークである。

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 パリのファッションウィーク(パリコレ)に野次馬見物にいくことがある。言われなくても場違いなのはわかってる。世界中から招かれた100くらいのブランドがパリ市内を縫ってショーを繰り広げる1週間には、日本からもイッセイミヤケ、コムデギャルソン、ヨウジヤマモトをはじめ10ほどのブランドが参戦している。私と同世代の30-40代のデザイナーのブランドもいくつかある。

ココ・シャネルが初めて世に送り出した香水©Unsplash

 封建社会や年功序列の象徴にも見える。若いブランドから先陣を切り、大御所ブランドが奥に構えるその布陣がだ。その上、シャネルなどハイファッションの頂点に立つブランドの顔ぶれは、半世紀前も今もほぼ変わっていない。毎シーズン絶えず流れ行くことを運命づけられたはずのファッション(=流行)産業で、市場参入規制もないのに頂点が長く独占されつづけているのは自己矛盾にも見える。なぜなのか? 答えがわかった方はこっそり教えてほしい。