暗号資産は人類史上もっとも利益率の高い資産

 暗号資産は爆誕と崩壊を繰り返している。2009年に誕生した現在15歳のビットコインの時価総額は2兆ドル、300兆円を超えている。2015年に誕生して10歳に満たないイーサリアムも4000億ドル、60兆円を超えている。すべての仮想通貨の時価総額の合計は3.3兆ドル超で、500兆円を優に超えている(すべて2024年12月現在)。身元不明者やヨレヨレTシャツの若者が書いたコードに刻まれたルールでしかない幻想に10年、20年で数百兆円の時価総額がつく。

ビットコイン ©Unsplash

 東京のタワマンも、純金も、アップル株でさえ足下にも及ばない成長率――人類の歴史上もっとも利益率の高い資産でありスタートアップである。未来に向かって新しい経済的生態系を作り出してくれそうな何かに巨大な価格がついたり剥がれたりするようになった。

占い師としての資本主義

 未来、ブランド、暗号、なりすましAI――雲を、夢を掴むような幻だと思われるかもしれない。たしかにそうだ。しかし、こうした幻想性は資本主義市場経済の起源からずっと付きまとってきた生まれながらの体臭である。胡椒、SNS、ピラミッド、広告、チューリップ、金融派生商品、大仏、スマホ、茶の湯、ファンクラブ、占い、宇宙旅行……なんでもいい。これらはすべて、歴史のある時点までは存在せず、誰の目も引かず、何の値段もつかないものだった。

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 こいつらに幻想と慣習を超えた最もプリミティブで、最もフィジカルで、最もフェティッシュな価値があるのかと問われると、怪しいだろう。ないと人が死んでしまうものは一つもない。今では値段がつくのが当たり前の様々な商品やサービスも、値段の根拠はグラグラでスカスカである。値段がある状態が長く続いたから価値があるに違いないとみんなで思い込んでいるに過ぎないと言えば過ぎない。

©Pixabay

 価値があるとまだ人々に思われていない物や事を拾い上げ、そこにまだ見ぬ価値が眠っているという物語をぶち上げる。物語がどれくらい腑に落ちるかは、それぞれの時代や土地の文化や価値観、技術・情報環境が決める。物語が少数の、しかし十分に多くの人々を説得すると潮目が変わる。新しい何かに価値があるとみんなが思い込みはじめ、それを使ったり拝んだり狂ったりし、終わりなく増刷されるお金をその何かに流し込み消費し投資する。すると、予言の自己成就的に新たな市場価格が実現してしまう。根源的な価値ではなく表面的な行動で需要や価格が決まる資本主義市場経済は太古からそういうものだ。新たな市場価格の絶えざるでっちあげ機関である。紀元前にすでに「ローマではすべてが売り物である」(ガイウス・サッルスティウス・クリスプス 紀元前86年 - 紀元前35年)と言われたように。