会社の価値を表す株式時価総額は7961億ドル(約119兆4000億円)で世界7位。自動車業界ではぶっちぎりの1位で、2位トヨタ自動車のおよそ3倍。米電気自動車メーカーのテスラは、その将来性を含め世界の投資家が最も高く評価する自動車会社である。

 だが創業者のイーロン・マスクはそんな評価に何の関心もないだろう。何せ野望は人類を「マルチ・プラネット・スピーシーズ」すなわち「複数の惑星で繁栄する種」に進化させることなのだから。

 核戦争か環境破壊か、はたまた小惑星の衝突か。マスクは人類がそれほど遠くない将来、地球に住めなくなってしまうことを本気で心配している。

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イーロン・マスク氏 ©時事通信社

物事を常人よりはるかに深く突き詰めて考える

 自らアスペルガー症候群の傾向があることを認めているマスクには、物事を常人よりはるかに深く突き詰めて考える性癖がある。伝記『イーロン・マスク』(ウォルター・アイザックソン著)によると、幼稚園のとき園長に「知的障害だと思われます」と言われたという。

 マスクは1971年、南アフリカで生まれた。父親は山っ気の強い技術者で、ザンビアから輸入したエメラルド鉱石をヨハネスブルグでカットして大儲けした。12歳のマスクを地獄のようなサバイバルキャンプに放り込んだかと思えば、自分の前に立たせ「お前はばかだ、マヌケだ」と1時間も罵倒し続ける。

 こうした環境で育つうちに、マスクの頭の中には「恐れの感情を遮断する回路ができたのでは」と元妻は証言している。

 筆者がマスクに会ったのは2013年のこと。楽天グループ会長兼社長、三木谷浩史がシリコンバレーの自宅で開いたホームパーティーを取材した時だ。