日本経済の中心地、東京・丸の内から“マル秘”財界情報をくわしくお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「丸の内コンフィデンシャル」。2025年4月号から、ダイジェストで紹介します。

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 農林中央金庫は2月20日、奥和登理事長が退任し、4月1日付けで北林太郎常務執行役員・最高財務責任者が新理事長に就任する人事を発表した。2025年3月期連結決算の最終損益が、外国債券の運用の失敗などで、1.9兆円程度の巨額赤字に陥った責任を取っての辞任だった。

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 会見で奥氏は去就について、「巨額の含み損を抱えた3年前から退任を考えてきた」と述べた。だが、昨年6月に1期3年の続投が決まったばかり。ある農林中金関係者は「金庫内でも昨年末まで、辞める気配はなかった」と明かす。

農林中金の奥和登理事長(左)と、北林太郎常務執行役員・最高財務責任者 ©時事通信社

巨額赤字の遠因は...

 一方、運用失敗を受けて昨年表明した、理事長報酬の3割カットだけでは済まないだろうとの意見も、金庫内にはあったという。農林中金OBが明かす。

「最終的にJA等から計1.4兆円規模の増資を仰ぐことになり、責任を取らざるを得ないということになった。経営がレームダックとなることを恐れ、発表をぎりぎりまで控えた」

 18年に理事長となった奥氏。巨額赤字の遠因の一つが組織改編だ。21年度から専務・常務理事ポストを無くし、理事長の下に執行役員が横一線に並ぶ、「理事長直轄型組織」へ移行した。役員枠が縮小され、若返りが図られたが、「4人の代表理事専務が転出させられましたが、中にはマーケットに精通する役員もいた。一方、奥氏は企画・管理畑が長く、マーケット経験はない」(別の農林中金関係者)。

 運用に活かすための情報収集力も低かったという。