2月20日、農林中金の奥和登理事長が3月末で引責辞任すると発表した。2025年3月期決算が約1兆9000億円の赤字となる見通しを受けて責任をとるかたちだ。
なぜ、ここまで赤字がここまで膨らんだのか。農林中金のジレンマを読み解いた「文藝春秋PLUS」の記事(2024年7月16日配信)を一部紹介します。
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苦境に陥った原因とは?
そもそも、農林中金が予想を上回る苦境に陥ったのは、何が原因だったのか。
農林中金は、JAや各都道府県の信連から託された潤沢な円資金を国内外の有価証券等にグローバル投資している。その運用規模は約56兆3000億円(2024年3月末)にものぼる。「円で日本国債を買って、それを担保にドルを調達し、米国債等に投資する」(農林中金関係者)というのが基本投資フローだ。
その内訳はドル建てが52%で、円建ては24%に過ぎない。ユーロ建ては16%、その他9%と、全体の約8割が、海外運用で占められている。
「日本のマイナス金利環境の影響もあり、利回りの高い海外運用で利益確保を目指していた」(同前)
そこに米国の矢継ぎ早な利上げによる投資有価証券の価格急落と、ドル高による調達コスト増が襲った。
市場の混乱は農林中金の予想を超えた。奥氏は5月の会見で「想定を超えるような金利の引き上げだった」と、米金利の上昇に対して後手に回ったことを認めている。
想定外だったのは米金利だけではない。
「農林中金が10兆円の外債売却を決めた背景には、フランス国債の急落も影響しているのではないかと言われています」(前出・市場関係者)
6月9日の欧州議会選挙で、フランスの与党連合は極右政党「国民連合」に大差で敗れた。これを受けてマクロン大統領は下院を解散。7月下旬のパリ五輪開幕を前に、突如総選挙が実施されることになった。