「やっぱりか……」

 10月末に流れたあるニュースに、SNS上ではそんな声が相次いだ。

 北関東で連続した家畜や果物の大量窃盗事件に関連し、群馬県警が10人の元技能実習生を含む13人のベトナム国籍の男女を出入国管理法違反の疑いで逮捕した、という報である。

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 11月1日、豚を自宅アパートで食用に解体したとして、ベトナム国籍の元技能実習生の男が、と畜場法違反の疑いで逮捕されたことが報じられた際も同様の反応が巻き起こった。

 むろん、窃盗は言うまでもなく犯罪であり、許されることではない。被害に遭った畜産業者や農家の怒りやくやしさも、簡単に推し量れるものではない。

 しかし我々は、外国人技能実習生の資質ばかりを問うことはできない。彼ら外国人技能実習生の受入れ体制にも、大きな問題が潜んでいるからだ。

外国人の技能実習には160時間以上の講習が必要

 今年10月、技能実習制度の問題について取材を続けていた筆者のもとにある「内部告発」が寄せられた。告発者は関東にある、技能実習生の「入国後講習」を行う研修施設、S研修センターに最近まで勤務していたA氏だ。

「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」では、入国した技能実習生に対し、技能実習開始の前に少なくとも160時間以上の講習を受けさせることが、実習生の監理団体(企業らで作る実習生受入れのための組合)や受入れ企業に義務付けられている。

 講習の内容は、「日本語」や、「日本での生活一般に関する知識」、「技能実習生の法的保護に必要な情報」、「円滑な技能等などの修得等に資する知識」となっている。

 こうした講習を監理団体や受入れ企業から委託されて代行するのが、民間の研修施設である。いわば、来日した技能実習生にとっての、最初の拠り所である。

 S研修センターは、全国の10以上の監理団体から入国後講習の委託を受けていたというが、A氏によるとそこで数々のルール違反が行われているという。

「これを見てください」

 そういうとA氏は、スマホに保存されていた動画を再生した。そこには、車から降りてきた7人の男性が、大型スーツケースを担いで2階建ての一軒家へと次々に入っていく様子が映されていた。

A氏のスマホには7人の男性が部屋に入る様子が

 玄関をくぐると、そこはすぐに部屋となっており、2段ベッドが所せましと並べられている。その数24床。男性らは各自、ベッドにありつくと、そこで荷解きを始めた。