実は彼らはこの日、カンボジアから成田空港に到着したばかりの技能実習生だという。
多い時には1部屋に15人以上がすし詰めに……
A氏が話す。
「ここは、来日した技能実習生が最初の14日間を過ごす隔離施設です。技能実習生の受け入れは、新型コロナウイルス発生以降中断されていましたが、7月以降、タイやベトナム、カンボジアなどの国からは受入れが順次再開されています。ただ、条件となるのは入国後14日間の隔離です。厚労省の要請では、風呂とトイレが完備された個室に1名ずつ隔離することになっている。しかしうちでは、2段ベッドを並べたタコ部屋のような部屋に、多い時には15人以上を押し込めることもあった。タイミングによっては、違う国籍の実習生が混在することもあります」
動画を見ると、飛沫の拡散防止のためなのか、各ベッドには透明のビニールカーテンのようなものが便宜的に張られている。しかしベッドとベッドの間は人が行きかうことができないほど密接しており、1人でも感染者が混ざっていれば、簡単にクラスターが発生しそうなことは素人目にも明らかだ。
さらにA氏によると、S研修センターでは、入国後講習の違法な短縮も横行しているという。
前述のとおり、技能実習開始の前には少なくとも160時間以上の講習を受けさせることが法令によって義務付けられている。かつ、講習は1日8時間以内かつ週5日以内で実施することとなっているので、160時間の講習を終えるには、最低でも4週間を要することとなる。
明らかに守られていない講習時間
しかし、A氏はS研修センターで、入国からわずか3週間ほどで受入れ企業に配属される実習生を数多く見てきたという。
その証拠としてA氏は、一枚の写真を見せてくれた。2020年10月22日に来日したとされる技能実習生の「入国確定書」の備考欄には「11月16日17:00以降に迎えに参ります」という受入れ企業からの連絡事項が記載されている。
来日から3週間では、14日間の隔離期間中(前述のとおり隔離も適切に行われていないが……)にオンライン講習を行ったとしても、講習は完了しないはずだ。にもかかわらず、実習生の配属がその日に設定されているのである。