こうしたコンプライアンス違反、法令違反について、S研修センターの代表を務める人物に電話でぶつけてみた。
「あそこはオリエンテーションをしただけ」
しかし、「何言っているんですか! うちは、きちんとルールにのっとってやっていますよ。一軒家で隔離? あそこはオリエンテーションをしただけで、別の場所に移動して隔離していますよ。講習を短縮したことも一度もありません。もうこれ以上はお話しすることはありません! もうかけてこないでください!」と激高され、一方的に電話を切られてしまった。
一方、S研修センターの実態について、外国人技能実習制度の支援機関である公益財団法人・国際人材協力機構に問い合わせたところ、担当者はこう言う。
「技能実習生の受入れは、厚労省の14日間隔離の要請を徹底することを条件に認められているものなので、違約となれば問題です。講習の短縮については法令違反でもある。いずれのケースも、事実と認められた事業者の名前を公表するなど、厳しい措置を講じていく」
ただ、技能実習業界の内情をよく知るA氏によると、S研修センターも氷山の一角に過ぎないという。
「新型コロナで7月まで技能実習生の受入れが止まっていたせいで、一部の受入れ企業は労働力不足に陥っていて、『できるだけ早く実習生を寄越せ』といってくる。一方で、14日間、実習生を一人一部屋で隔離させるためのコストは、企業側は負いたがらない。
結果的に、下請けである研修施設が手を汚さざるを得なくなっていることも事実です。特に今は、多くの研修施設は、実習生の受け入れがストップしていた間の損失を取り戻そうと必死です。ちなみに、技能実習生を隔離から講習まで面倒を見て、監理団体から支払われる報酬は1人当たり10万円程度と薄利なので、研修施設としてはできるだけ多くの実習生を受入れたい。ルールを順守して仕事を失うよりは、違反しても生き残ろうとするのも無理からぬことです」
問題の根幹は、「技能実習」などというのは建前に過ぎず、実態は低廉な労働力の供給システムに過ぎないという詭弁の実態にありそうだ。
技能実習生にとっても、来日して初めて身を置く社会で、ルール違反が平然と行われていたとすれば、その後の順法精神への影響も少なくはないだろう。