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2020/12/21

「お前も豚を解体して食ったのか?」

 クィさんが日本に興味を持ったきっかけは、東日本大震災だ。津波の映像を流すニュースにくぎ付けになった。

「被災した子供が、配給でもらった食べ物をお年寄りにゆずっていたシーンがあったんです」

 その場面に感動して日本に興味を持ち、大学では日本語を専攻。学ぶうちに、実際に日本で暮らしてみようと思い、留学を選んだ。日本語学校に通い1年目でJLPT(日本語能力試験)で上位からふたつ目のレベルであるN2を取得するなど、日本語能力は高い。

 その後は大学に進学、商学部で学びながら将来的には日本での起業も視野に入れており、「犯罪をするベトナム人」のイメージとはほど遠い。

ふたりとも日本語は堪能。タオさん(右)は「自宅で味噌汁をつくる」ほど日本食が好きだという ©室橋裕和

 クィさんはこの4月から、

「コロナでどこにも行けないから」

 と、いまどきの若者らしくYouTubeで「クイチャンネル」を開設。テーマは「ベトナム人から見た日本」で、おもに流暢な日本語で発信している。和食のおいしさ、コンビニの便利さ、明治神宮でのコロナ終息祈願、両国の恋愛観の違い……だんだんとファンも増えてきたのだが、

「ときどき悪口が書き込まれるようにもなりました」

 と言う。「お前も豚を解体して食ったのか」「日本から出て行け」……そんな心ないコメントも寄せられる。

 だから「日本在住のベトナム人を代表して“これだけ”は言わせていただきます【犯罪行為について】」という動画をアップ。犯罪とは無縁でまじめに仕事や勉強をしているベトナム人が大多数であること、今後は在日ベトナム人社会に向けても、日本の法律やルールを守るようYouTubeなどで伝えていくこと、差別はしないでほしいことを訴えた。