1月7日夜、菅義偉首相が2度目となる緊急事態宣言を発出した。小池百合子都知事はじめ1都3県の知事が2日に政府に緊急事態宣言の検討を要請したのを受けたかたちだ。飲食店などには営業時間の短縮も要請。正月明け早々、世間は自粛ムードに包まれた。

 新規感染者の急拡大を前に「もうこれしかない」と歓迎する世論と、渋々、宣言を発出した菅義偉首相——一連の経過はそんな構図で捉えられたふしがある。確かに、菅氏と小池氏が意地を張り合う中で時間が浪費されてきた。だが、その端緒に、流行の中心、東京都の小池知事が放った“悪手”があったことが忘れられていないか。

小池百合子都知事 ©文藝春秋

 改めて「調整なし」の一手で仕掛け、感染拡大に手を焼く菅官邸に打開の道をしめす「救世主」であるかのごとくふるまう小池氏自身が、足元の感染拡大をゆるした現場責任者ではないのか。

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「東京都」と「全国」で第3波の感染者数の推移を見ると、波形は概ね一致する。東京都で初めて500人を超えたのは11月19日、600人超えは12月10日、1000人超えが大晦日である。対する全国では、初めて2000人を超えたのは11月18日のこと。12月12日に3000人を超え、大晦日に4000人を超えた。

 一方、東京都と対照的なのは、12月上旬から減少に転じた北海道と大阪府だ。11月20日に最多の304人を記録した北海道の1月2日の感染者数は77人、11月22日に490人の過去最多を記録した大阪府も下がり切ってはいないとはいえ、258人だった。

「増えた」東京都と、「減った」北海道・大阪府の違い

 増える東京都と減った北海道、大阪府の違いについて政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会のメンバーである専門家に訊ねると、ちょうどその1週間から2週間前、クリスマスパーティーや忘年会について、住民が「取りやめる行動(行動変容)」を取ったか否かが寄与している、と分析した。

 北海道や大阪府では多くの住民に「取りやめる行動」が見られ、東京都では見られなかった——と。

元旦8時すぎの明治神宮 ©広野真嗣

 あたりまえだが、自粛しなかった人々を責める話ではない。たまには仲間と外で食事をしたい、クリスマスや忘年会ぐらいは楽しくやろう、と思うのは人情だし、まじめに感染対策に勤しんでも瀬戸際まで追い詰められた店主の立場なら、給与が減らない役人から言われたぐらいで応じてたまるかと憤るのがふつうの感覚だ。

 だからこそ国民に語りかけて説得し、「受け入れ難いけれど、そこまでいうなら協力するか」と思ってもらうことができるか——政治家が国民の行動を変える、心に響くメッセージを放つことができたのかという文脈で語られるべき事柄なのだ。