督促修行で“だめんず”好きに終止符
督促の仕事を通じて、濃い人間模様を見続け、自ら修羅場に巻き込まれるうちに、私もちょっとは大人になったと思う。なによりも土下座して感謝したいのが、だめんず(=ダメな男の人)からの卒業だった。
全然自慢じゃないけど以前の私はキャッチセールスにもひっかかったけれど、だめんずにもよくひっかかっていた。
だめんずにひっかかってる時は、周りの友達がどんなに「あんな人やめなよ~」「あの人はだめんずじゃない?」と言っても本人はぜんぜん気がつかない。
ところが「督促道」を身につけるにつれ、不思議と長らく曇っていた目から靄が取れ、瞬時に「あ、この人はだめんずだ」とわかるようになった。まるで長らく債権回収をやっていると、人を見て「この人借金してる」とわかってしまうように(ある意味近いのかも)。
コールセンターで働く女子には、督促をしてからだめんずを克服したという子がけっこういる。まさに督促サマサマだ。
ちなみに私が大学時代から長らくひっかかっていたのは「悪口系だめんず」だった。
「お前はだからダメなんだよ」
「いいところなんてない」
「自分がかわいいとか思ってんの?」
だめんずの彼は会う度に私にこう言った。最初は嫌だなと感じたり、ちゃんと傷ついたりもするんだけど、そのうち麻痺して慣れてしまい、なんの疑いもなく「私ってダメなんだ」と思うようになる。完全に洗脳状態に陥る。
「悪口系だめんず」にひっかかると、女は間違いなく容貌にそれが表れる。うつむいて、おどおどしていつも自信なさそうな表情になってしまう。「かわいい、かわいい」と言われ続けると女の子は本当にかわいくなるけど、逆もまたしかり、なのである。
根っこにやましい気持ちがあるから「怒鳴る」
督促をするとお客さまに怒鳴られ、罵倒されることも多い。でも督促の仕事を続けているうちに、お客さまが私たちを怒鳴るのは根っこにやましい気持ちがあるからだとわかるようになった。
お金返さなかったらどうなるのかな、という不安。ホントはお金を返さなきゃいけないんだけど返してない、という罪悪感。それを守るために、お客さまは私たちを怒鳴る。
悪口系だめんずの彼も自分に自信がない人だったのだ。自分の自信のなさを補うために相手に悪口を言う。ああそうか、ダメなのは自分じゃないんだ、と気付いた時、パリン、と洗脳が解けた気がした。それがわかってから、私は数年ひっかかり続けたそのタイプにやっと別れを告げることができた。