「人見知りで話しベタで気弱」を自認する新卒女性が入社し、配属されたのは信販会社の督促部署! 誰からも望まれない電話をかけ続ける環境は日本一ストレスフルな職場といっても過言ではなかった。多重債務者や支払困難顧客たちの想像を絶する言動の数々とは一体どんなものだったのだろう。
現在もコールセンターで働く榎本まみ氏が著した『督促OL 修行日記』から一部を抜粋し、かつての激闘の日々を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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合コンサバイバル
お支払いを延滞しているお客さまに督促の電話をかけるコールセンターで働いていると、1日何百人というお客さまの年収をパソコンの画面で見続けることになる。
電話をする時に確認するお客さまの情報には、延滞情報以外にもお客さまの勤務先や収入などが細かく記録されているからだ。そして毎日これをやっていると、いつの間にか知らず知らずに悲しい「特殊なスキル」が身についてしまう。
それは、相手のプロフィール、勤め先を聞いただけで自動的に年収を算出してしまう能力――“年収スカウター”――である。
使いどころは、まあ、合コンである。
入社1年目の夏に学生時代の彼氏にふられてから仕事が恋人状態が続いている私もいい加減に婚活にいそしまなければいけない年齢なので、たまには合コンにも参加することがある。ホントに、たまにはだけど……。
ただ、合コンの自己紹介で会社名や年齢を聞いてしまうと、ピピピピ……っと瞬時にお相手のだいたいの年収が頭の中で算出されてしまう。
恐るべき精度の“年収スカウター”
これは金融業界に勤めるOLにはほぼ備わってしまう能力らしく、恐ろしいことに私の周りの督促をやっている女子はほぼ100%、この年収スカウターを搭載している。
相手の正確な年収を瞬時に算出するためには、長年の経験や実戦で培った勘が必要になるが、先日の貸金業飲み会で知り合った貸金業界勤続十数年のR子さんの持つ年収スカウターは恐るべき精度を誇る。だからなのか、彼女は合コンの席にはひっぱりだこらしい。
「はじめまして、R子です! 金融のお仕事してますぅ~」
「あ、はじめまして山田(仮)です、SEしてます」
「あ、システムエンジニアさんなんですか、すごい~! どこで働いてるんですかぁ?」
「マイナーなんですけど……○×システムっていう……」
「そうなんですか~(注:R子さんはもちろん住所まですでに把握済み)。大変そうなお仕事ですよね! ところで山田さんはおいくつですかー?」
「僕ですか? 30歳です」