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「元々、《ラムネ》は《アケビ》に恋をしていました。そして同時期に、《ゆず》は《アケビ》の妻である《フジ》に気があるような素振りをしていて……。ややこしい関係だったんです。

 ところがある日、《ラムネ》と《ゆず》が一緒にいるのをスタッフが発見。その後も2羽が寄り添う姿を何度か目撃していました。『意外とこの2羽は相性がいいかも……』と思い、より仲を深めてもらうため、ブリーディングルーム(繁殖期に巣を設置したり、ペンギンたちが子育てをする部屋)に連れていって、2羽きりの世界をお膳立てしてみたんです。するととてもよい雰囲気になり、仲よしペンギン同士が行う羽づくろいをする姿も見られました」

電撃結婚を果たした《ゆず》と《ラムネ》。末永くお幸せに……

 その後も“恋のキューピッド飼育員”はあの手この手で2羽の仲を取り持った。

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失恋を乗り越えたラブラブ夫婦

「他のカップルと同じ部屋に2羽を入れてみたり、《ラムネ》の想いペンギン《アケビ》と出会わないよう、入れ替えで展示に戻してみたりと、《ラムネ》の気持ちが《ゆず》に向くようにサポートしました。その甲斐あってか、《ラムネ》と《ゆず》はお見合い後約2か月で交尾をし、カップル成立となったのです。

 今では《ラムネ》が《ゆず》にゾッコンで、《ゆず》の声を聞くと小走りで駆け寄っていきます。寝るときには2羽のお気に入りの場所で、毎晩一緒に寝るほどラブラブです」(同前)

 ペンギンたちはなぜこうも複雑な関係を作り出すのだろうか。すみだ水族館広報の山口さんは「ボスのような存在がいないことが影響しているのかもしれません」と分析する。

“ボス”がいないからこそ深まる関係性

「ペンギンは群れの行動を誰かが統率するということはありません。誰かが歩いたらついていく、びゅんびゅん泳ぎ始めたらみんなつられて泳ぐ、オスが鳴き声でアピールしたら他のオスも負けじとどんどん鳴きだして大合唱になるなど、多少の力関係などはありますが、フラットな共同生活を営んでいます。だからこそ個体の性格によって、群れのなかの関係性に変化が起きやすいのだと考えられます」

 そんなペンギンたちの生活は恋愛面以外でもとても豊かだ。

「大人が交尾をしていたら子ども達がのぞきに行って、その結果怒られるとか、好きな場所が被ったペンギン同士が日々駆け引きするとか、決まってごはんを横取りされる子がいるとか……。ペンギンたちの関係性は興味深く、見ていて飽きませんよ」(同前)

 人生は悲喜交々。人間もペンギンもそれは同じなようだ。