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CMの違約金、お詫び行脚……武井咲妊娠で溢れた批判記事

 それに、私が気になるのが、芸能界のあり方です。先月9月1日、女優の武井咲さん(23)が、EXILEのTAKAHIROさん(32)との結婚と妊娠を公表しました。とってもおめでたいニュースのはずですが、これに関するネットの記事を検索すると、CMの違約金がどうの、スポンサーにお詫び行脚がどうの、事務所ともめているとかなんとか……お祝いに水を差す話ばかりなのです。

おめでたを発表した武井咲さん ©文藝春秋

 芸能界では、アイドルや女優は若いうちの恋愛が事務所によって禁止され、「妊娠などもってのほか」といった縛りがあると言われます。しかし、それを守っているうちに35歳を超えてしまい、高齢出産になる人が少なくないのではないでしょうか。

「大切な稼ぎ頭に商品価値を落とされたら困る」「大きな金額が動く契約は守ってもらわねば」という大人の事情も分からないではありません。しかし、恋愛や妊娠できる期間を縛ると、女性たちが自然に妊娠して、比較的安全に出産できる機会を奪ってしまうことになるのです。大きな「人権侵害」を冒していると私は思います。

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 また、芸能界の方々が次々に高齢出産を果たし、幸せそうな姿を見せることで、一般の人に「高齢になっても妊娠して、無事に出産できる」という「幻想」を抱かせることにもなっていると思います。しかし、不妊治療をして、妊娠・出産を果たすのは、想像以上に大変です。

芸能界の「恋愛・妊娠禁止」縛りを撤廃すべきだ

 かつて私が取材した女性は、43歳で出産するまで、4年半にわたり不妊治療を受けました。激痛をともなう検査や卵巣に針を刺す採卵、副作用のきつい薬を何度も打つなどして、ようやく妊娠判定日を迎えても、ダメなことがわかり絶望感に打ちひしがれる日々……。

 そのようなつらい治療に、そのご夫婦は最終的に650万円も費やしたそうです。自治体の費用負担があったものの、焼石に水。それで妊娠できたからよかったものの、出産まで至らない人も少なくありません。泰葉さんが言う通り、「医療技術が発達」しているとはいえ、まだまだ現実は厳しいのです。

 ですから、芸能界の方々には、自分たちの私利私欲のために恋愛・妊娠を禁止するような縛りは撤廃してほしいのです。それよりも、若くして妊娠・出産をしても(もちろん、高齢で出産したとしても)、みんなが祝福できるような環境を芸能界につくり、社会に範を示してほしいのです。ママさんタレントやママさん女優の活躍、素敵なことではありませんか。

 日本の出生率が低いのはご存知の通りで、このままでは日本人自体がどんどん減っていき、100年後には絶滅危惧種になるとも言われています。選挙で大きな争点になることはありませんが、安心して生み、育てられる環境づくりを政治家が推進することも非常に重要です。アホな政局争いをしている場合ではありません。

 日本の将来のために、大きな発信力を持つ芸能界の方々が果たすべき役割もあるのではないでしょうか。芸能界の方々には、真剣に考えていただきたいと切に願います。