先月20日、春風亭小朝さんの元奥さんで、シンガーソングライター・泰葉さんの婚約会見にはびっくりしました。
婚約相手が、フェイスブックで知り合い、会ったばかりという年下のイラン人男性だったからだけではありません。56歳という年齢であるにもかかわらず、子づくり宣言まで飛び出したからです。泰葉さんは、会見で次のように語っておられます。
「女性として、どうしても子どもを作りたい。どういう風に作るかはわかりませんが、今は医療技術も発達している。彼の血筋を残したい。たくさんの子どもを育てたいので引退をします」
72歳で妊娠・出産というニュースも
これを聞いて、「56歳にもなって、妊娠できるの?!」と思った人も多かったのではないでしょうか。私も疑問に思ったのですが、ネットで調べると昨年4月19日、なんと72歳のインド人女性が体外受精によって妊娠・出産したというニュースがありました。
夫は79歳で、結婚して47年間子宝に恵まれなかったそうです。しかし、同じくインドでは06年に70歳の女性が女児を出産しており、08年には66歳の女性も三つ子を出産したとのこと。これを報じた記事を新聞で読んで、夫妻は不妊治療センターに通うことを決意したのだそうです。
日本でも、60歳の人が妊娠・出産した記録があり、高齢出産を果たした有名人もたくさんいます。12年には、ラジオパーソナリティの坂上みきさんが6年間の不妊治療の末、53歳で男の子を出産しました。また、その前年には現・総務大臣の野田聖子衆議院議員が米国で卵子提供を受け、50歳で出産。障害を抱える息子さんの闘病と成長をテレビで公開し、話題を呼びました。
最近では今年6月に、おしりかじり虫の声優でタレントの金田朋子さんが、44歳で女の子を出産なさっています。ほんとうに、おめでたいことです。
このような例がありますから、泰葉さんの妊娠・出産も夢ではありません。イランで(?)夢が叶って、今度こそ幸せになられることを、蔭ながらお祈り申し上げます。
41歳で40%……急増する流産率
ただ、20代、30代の女性の方々には、こうしたニュースを読んで、「医療技術が進歩しているから、妊娠・出産はまだ大丈夫」と思わないでほしいのです。というのも、ご存知の方が多いとは思いますが、女性は年齢が高いほど妊娠しにくくなり、妊娠したとしても出産のリスクが高くなるからです。
日本産婦人科学会が公表している2015年のデータによると、女性が体外受精などの不妊治療(ART=生殖補助医療)を受けた場合の妊娠率は、34歳ごろまでは25%以上をキープしていますが、その後低下していき、40歳で約15%、金田さんが出産した44歳で5%を切り、それ以降は限りなくゼロに近づきます。
一方で、妊娠に対する流産の確率は上昇していき、35歳までは20%以下なのが、どんどん上昇して41歳で40%、44歳で60%、48歳には90%にまで跳ね上がります。高齢になるほど妊娠しづらく、無事に出産することが難しくなるのです。
産婦人科医は「20歳代から30歳代前半までに出産するのが自然」
それだけでなく、高齢出産になると妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病になり、早産や難産になるリスクも高くなります。私も不妊治療の取材をしたことが何度かありますが、ある産婦人科医が、次のように話してくれたのが印象に残っています。
「若い時は、50メートルでも100メートルでも全力疾走でき、すぐに元気を取り戻せますよね。でも、年をとればとるほどすぐに息が切れて、体力を使い果たしてしまいます。それを考えれば、若いときに出産するのと、高齢のときとでは体力面で条件が違ってくることがわかるのではないでしょうか」
その医師は、「平均寿命は延びたけれど、閉経の平均年齢はほとんど変わっていません。やはり、20歳代から30歳代前半までに出産するのが自然の理に適っている」とも話していました。35歳以上になって初めて出産することを「高齢出産」と言いますが、35歳以上という線引きには、こうした確たる理由があるのです。
女性も働くことが当たり前になり、まだまだ不十分とはいえ、キャリアを重ねて活躍する人が増えました。「産むか産まないか」「いつ妊娠して、いつ産むか」は個人の自由であり、誰かに強制されることではありません。ですが、男女とも妊娠・出産の年齢に関する知識は、若いうちに学んでおくべきだと思います。