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じつは未来を先取りしていた『北の国から』

 あと、『北の国から』には後に話題になった映画を先取りしているシーンがある。

 スペシャル版の『'92巣立ち 前編』では草太兄ちゃん(岩城滉一)が結婚式を広大な草原でひらく。住人が集い、儀式がおこなわれる。中央には謎のでかい柱のようなものが建っていて、なぜか田中邦衛が花で飾られたブーケを頭につけて入場してくる。

©文藝春秋

 実はこれ、2019年の『ミッドサマー』(アリ・アスター監督)で描かれた「祝祭」のシーンとそっくりなのだ!

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 明るければ明るいほど不気味になってくるミッドサマーの祝祭。明るければ明るいほどよくわからない結婚式での黒板五郎。両作品とも儀式の後に惨劇が…という展開も同じ。ひとつだけ「明るい」ことを言えば富良野の美しさはスウェーデンにひけを取らないことだった。『北の国から』は早すぎたミッドサマーでもあった。これに気づくことができたのも最近見たからこそである。

 さらに、いま公開されている映画『ミナリ』は、80年代に韓国系移民がアメリカンドリームを目指してほぼ何もない土地で家族で奮闘する物語だ。いい映画だと思いながら私は『北の国から』も思い出していた。五郎も純も螢もよく頑張ったと。

30年越しで受けた“衝撃”

 最後にこちらのエピソードも入れておきたい。

 スペシャル版の『’84夏』で、純は東京から遊びに来た友だちがパソコンを操作する姿に衝撃を受ける。そしてこう言われる。

「将来買い物もパソコンでできるようになる。サラリーマンは会社に行かなくても家で仕事できる。もうじきそういう時代になる」

 このセリフに30年以上経ってから衝撃を受けている私。今だから面白いシーンがたくさんある。

『北の国から』はやっぱり2021年に見たほうがいいです。