1ページ目から読む
4/5ページ目

 滝川市のいじめ自殺では、道教委の対応も不十分だった。道教委は遺書のコピーを紛失していたという。女子児童が自殺を図った当日の午前9時ごろ、空知教育局を通じて道教委に知らせが入っていた。遺書が残されていたことも把握していた。また、翌年6月、市教委は遺族から入手した遺書のコピーを空知教育局に提出。2日後に、道教委学校安全・健康課に届けられた。しかし、課長には報告されなかった。

 旭川市のいじめ凍死事件では、まだ道教委の対応は明らかになっていない。川への飛び込みが地元の「メディアあさひかわ」で取り上げられた時点(2019年9月)で、市教委から道教委にどのような報告がなされていたのかは注目だ。また、道教委が市教委に対して、どのような指導・助言をしていたのか――。調査委の調査では、この点も一つの焦点になり得る。

飛び込み事件の現場となったウッペツ川 ©文藝春秋

文科大臣が会見、副大臣が遺族を弔問――文科省も動いた

 滝川市のいじめ自殺は当時の文部科学省を動かした。遺書を公表しなかったことについて、伊吹文明文科大臣(当時)は、記者会見で「幼い子どもが精神的に非常に動揺してるなどという事態は、できるだけ早く見抜いて、家庭あるいは学校現場で、しっかりと対応してもらわないといけないと思いますので、そのためにも握りつぶして公表しないなどということは、あってはならないことだと思います」と述べた。

ADVERTISEMENT

 そして2005年10月17日午後、文科省の職員3人が滝川市役所を訪れ、現地調査を行った。市教委幹部4人から報告を受けている。11月6日には、副大臣が遺族を弔問するという異例の対応もあった。旭川のいじめ凍死事件でも、文科省が調査に乗り出す姿勢を示している。

過去に自殺とされた41件のうち14件でいじめが確認

 ちなみに、文科省統計では、1999年~2005年度にいじめを苦にした児童生徒の自殺の件数はゼロとされていたが、改めて調査したところ、自殺とされた41件のうち14件でいじめが確認された。このうち、滝川市の件を含む3件が「自殺の主たる理由」に、6件が「理由の一つと考えられる」に変更になった。

 文科省はその後、「いじめ問題への取組の徹底について」を通知した。チェックポイントの一つ「指導体制」として、

  1. いじめの問題の重大性を全教職員が認識し、校長を中心に一致協力体制を確立して実践に当たっているか。
  2. いじめの態様や特質、原因・背景、具体的な指導上の留意点などについて職員会議などの場で取り上げ、教職員間の共通理解を図っているか。
  3. いじめの問題について、特定の教員が抱え込んだり、事実を隠したりすることなく、学校全体で対応する体制が確立しているか。

 と定めている。