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「コロナを理由に業界から退場したくない」苦境続きの旅行代理店社長が語る“ギリギリの生き残り策”

柏倉幸彦さんインタビュー #2

2021/05/15
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柏倉 ただ、問題もあります。たとえば補助対象メニューの一つに「アクセスバスの実証運行」という事業があります。廃止されたバス路線を復活させてみるという実証実験の経費に最大5000万円つくのですが、人が乗らなかったから廃止された路線なのに、本当に意味があるのでしょうか。

 でも、旅行したりイベントを開いたりしても問題がないという雰囲気になれば、こんなバラマキの予算なんてつけなくて済むのではないでしょうか。私たちも補助金を取りたいと思ってはいますが、本来はこの雰囲気を変えてくれたら、みんな普通に旅行に行くし、イベントにも来るようになる。そうすれば、私たちの会社の経営も立て直すことができるんです。

銀行からは1億円以上借りた

──本業の旅行商材以外の販売とか、国の入札に参加することで、会社の経営は維持していけるのでしょうか。

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柏倉 こうした補助金も取れないよりは取れたほうが会社の延命につながるというのが、私たちの位置づけです。しかし、必ず取れるとは限りません。私たちは、あと1年はこの雰囲気がだらだら続くだろうと思っています。とにかくそれまで耐えていきたい。2022年春には元に戻ってほしいという希望的観測を持っていますが、航空会社はもっと悲観的です。本格的に旅行が復活するのは再来年の2023年と想定して予定を組んでいます。

柏倉幸彦さん(ジャパトラ代表取締役社長)

 ただ、1年後に仕事が復活しても、資金繰りができないかもしれないと不安に感じています。実は、コロナ禍になってから、1億円以上銀行から借りました。緊急融資ということで、3年間は返済猶予で金利ゼロとなっていますが、いずれ返さなくてはいけません。それに私たちの仕事は、受注してもすぐにお客様が入金してくれると限らないのです。その間、自分たちの手持ちのお金で、航空代金やホテル代などを支払わなくてはいけない。返済額が大きいと手持ちの資金が底をついて、運転資金が回らなくなる恐れがある。

 私たちの会社は、役職員、パート、臨時スタッフも含めると数十名で日頃の業務を運営しています。売り上げは5年前が一番多く、13億3000万円でした。2018年は7億8000万円。それが今年は前期1億1000万円くらいです。これまでも借り入れはありましたが、2000万円くらいでしたから、大したことはありませんでした。しかし、1億円は大きいです。これは当社だけの話ではなくて、もう少し大きな100名を超える従業員がいる知り合いの会社は、5億以上借りたと聞いてます。