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「コロナを理由に業界から退場したくない」苦境続きの旅行代理店社長が語る“ギリギリの生き残り策”

柏倉幸彦さんインタビュー #2

2021/05/15
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「何も悪いことはやっていないのに」

柏倉 自分の性格が幸いして、なんとかなるだろうと思ってはいますが、それでもうつ状態になることはあります。つい先日まで、かかりつけ医で睡眠導入剤も処方してもらっていました。お金のことだけではなく将来のことが不安で、寝る時にいろいろ考え込んで、アドレナリンが出てきてしまう。それで眠れないんです。

 とにかく、コロナを理由に業界から退場したくない。もともと何の努力もせず、放漫経営していたのだったら、潰れても仕方ないと思うのですが、別に何も悪いことはやっていない。なのに、強制的に退場させられるのは悔しい。しかし、だんだん金融機関も融資する会社を選別してくるでしょう。銀行だって、返してくれるところにしか貸したくない。私も踏み倒すわけにはいかないので、できればこれ以上借りたくないというのが本音です。

──安倍前政権ではインバウンド(海外旅行客)を増やすのが経済対策の柱の一つだったわけです。東京オリンピック・パラリンピックの来場客も見込んで、新しいホテルもたくさん作られました。しかし、コロナ禍で日本の観光業は壊滅的な状況です。もしコロナ禍が明けて、インバウンドが戻って来たとなっても、観光業や飲食業自体が弱体化して、渡航先としての日本の魅力が薄れてしまうのではないかとの指摘もあります。

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柏倉 そこはあまり悲観していないんです。私は様々な国を見てきましたが、日本の観光コンテンツは海外の人にとって非常に魅力的だと思います。観光大国であるフランスは、コロナ禍以前は国外から9000万人もの観光客が来ていました。日本は4000万人を目標にしていましたが、いずれは6000万人くらいになると思います。

 ただ、短期的には、ホテルや飛行機などの観光インフラがシュリンク(縮小)してしまったので、コロナ禍が明けてもすぐには復活できないでしょう。観光を復活させるためには、ある程度のインフラの再整備が必要だと思います。それに、5年後、10年後に新たな感染症のパンデミックが起こったら、こうした自粛をまた繰り返すのか。観光業界として、どうすればパンデミックを乗り越えることができるのかも、考えておく必要があると思います。

 とにかく私たちは、きちんと定められた感染対策を行っていたら、コロナ陽性者が出ても非難されずに旅行やイベントを行える。そんな社会に早く戻ってほしいだけなんです。

「コロナを理由に業界から退場したくない」苦境続きの旅行代理店社長が語る“ギリギリの生き残り策”

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