4月25日に3度目の緊急事態宣言が発出され、アルコール提供を禁止された飲食店や休業要請された百貨店、娯楽施設などの苦境が伝えられています。そんななか、観光業やイベント業は昨年末にGo Toキャンペーンが中止されてから、半年近くも苦しい状況に置かれ続けたままです。当事者はどんな思いでいるのか。法人向けの研修旅行やイベントを手がける旅行代理店ジャパトラ代表取締役社長の柏倉幸彦さんに、今の“率直な思い”を伺いました。(全2回の1回目/後編に続く

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「スケープゴートにされるのは本当に悔しい」

──観光業の方々はGWに期待しているところがあったと思います。ところが、蔓延防止措置に続き、4月25日に3度目の緊急事態宣言が東京、大阪、兵庫、京都で発出されました。5月12日からは愛知県と福岡県も対象地域に加わり、5月31日までの延長も決まりました。県境をまたいだ移動を控えるよう呼びかけられ、旅行やイベントの自粛が続いています。

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柏倉 私たちも言いたいことがいっぱいあります。昨年の第3波のとき、Go Toトラベルが一番のやり玉に上がりました。その結果、マスコミはじめ社会的な圧力でGo Toトラベルは中止に追い込まれてしまった。第4波になって、今度は飲食店がターゲットになった。何かのせいにして叩かないとダメなのかなという気がものすごくしています。

──Go Toトラベルを巡っては、昨年11月に日本医師会の中川俊男会長が「(感染者急増の)きっかけになったことは間違いない」などと発言した一方、今年2月には国立感染症研究所などの研究グループが「Go Toトラベルと新型コロナウイルスの感染者増加には関係がなかった」という論文を出しています。

閑散としている羽田空港(2020年12月28日撮影) ©AFLO

柏倉 昨年5月、第1波の緊急事態宣言が明けて観光旅行やイベントが復活する中で、私たち旅行業やイベント業に携わる者も感染拡大させないよう、国や都道府県が出しているルールにしたがってコロナ対策を徹底してきました。感染拡大の大きな原因になっているという明確なエビデンスはないのに、スケープゴートにされるのは本当に悔しいです。

 私たち法人向けの旅行代理店やイベント関連会社が一番困っているのは、コロナそのものではなく、コロナ陽性者を出したら困るという「雰囲気」なんです。私たちがお得意様に営業に行っても、「本当は研修旅行やイベントをやりたいんだけど、主催関係者に謝罪をさせるわけにはいかない」とおっしゃるんです。

 イベントを開くにしても、入場者を会場の定員の半分までにする、入り口で熱を測って発熱している人は帰ってもらう、入る前にみなさんにアルコール消毒をしてもらう、会場で密をつくらないようにするなど、国や都道府県が出している感染予防のルールがあります。しかし、それを厳格に守っていたとしても、万が一コロナ陽性者が出たら、関係各所に謝罪文を出して、会見を開いて世間にもお詫びしなくてはいけない。そのために、あらゆる業種の企業・団体は、イベント開催自体の断念・自粛に追い込まれています。