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売上は85%減、GWも消えた…「この自粛をどこまで続けるつもり?」旅行代理店社長が“怒りの訴え”

柏倉幸彦さんインタビュー #1

2021/05/15
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いつまでこの自粛を続けるのか?

柏倉 先日も、私たちも関わったある業界団体のイベントで、展示ブースに出展していた関連メーカーの社員が体調を崩し、検査の結果コロナ陽性と出たんです。その会社はイベント参加者全員に一斉に謝罪メールを出し、社員が主催者の方々にも頭を下げて回ったそうです。イベントのホームページにも事の経緯を説明する文書が出て、陽性が発覚した日の午後から展示がすべてクローズとなりました。そして、隣接していたブースの会社の人は全員3日間出席停止となりました。

 保健所の方が来られて、濃厚接触者はいないという結論になったので、ブースのあったエリアと、陽性者が動いた動線に沿って、エスカレーター、エレベーター、ソファー等を消毒し、翌日には再開するという決定が出ました。しかし、「そういうことがあるんだったら、やっぱり今度からイベントはやめよう」となるんです。それが私たちの業界で、仕事がすべてストップしてしまっている元凶なんです。

──国や都道府県が決めたルールにいくら従っていても、陽性者が一人でも出れば謝罪しなければいけない状況が続いているのですね。

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柏倉 1年以上経っているのですから、イベントでコロナ陽性者が出たとしても、きちんと対策をしているのだったら非難されるような社会であってはいけないのではないかと思うのです。

柏倉幸彦さん(ジャパトラ代表取締役社長)

 いわゆる「コロナ警察」が現れるような雰囲気を作ったのは政治家の責任だと思いますが、マスコミも問題だと思います。いったいどこまで、この自粛を続けるつもりなのでしょうか。感染者がゼロになるまでイベントは開いてはいけないのか。それとも「ウィズコロナで行く」というのであれば、どの段階まで行けばOKなのか。そろそろはっきりしてほしいと思っています。

「日通旅行の解散」が一番ショッキングだった

──経営的には、どのような状況に置かれていますか。飲食店には休業補償がありますが、観光業界には何かあるのでしょうか。

柏倉 昨年の持続化給付金や雇用調整助成金など、どの業種も受け取った支援金は、私たちも一通りいただきました。しかし、それ以外に観光業だけに特別な支援金というのはありません。会社の売り上げがもっとも落ち込んだのは2020年4月で、前年同月比92%ダウンでした。2019年と比べると毎月70~90%、年平均で見ると85%くらいのダウンです。JATA(日本旅行業協会)に加盟している大手旅行代理店の売り上げも毎月チェックしていますが、各社だいたい80~90%下がっています。

 大手旅行代理店は店舗を軒並み閉鎖しました。それに各社何千人という規模の社員削減を行っています。その中でも、私たち業界人にとって一番ショッキングだったのが65年の歴史を持つ日通旅行(日本通運の子会社)が会社を解散したことです。海外旅行の先駆者で、JTBと共同でつくった「ルックワールド」というブランドがありました。毎年、JALパックと売り上げ1位を競っていたんですが、その歴史ある会社がなくなったんです。