海外旅行の需要がほとんどなくなり、国内もGo Toキャンペーンが中止に追い込まれたために、旅行業・観光業は壊滅的な影響を受けています。歴史ある会社も次々に廃業に追い込まれ、多くの人が失業や転職を余儀なくされています。当事者の人たちは、この状況をどう思っているのでしょうか。法人向けの研修旅行やイベントを手がける旅行代理店ジャパトラ代表取締役の柏倉幸彦さんに、今の“率直な思い”を伺いました。(全2回の2回目/前編から続く)
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輸入商材の物販も始めたが……
──本業が厳しい状況で、ジャパトラさんはどうやって売り上げを補っているのですか。
柏倉 コロナ禍が明けるのを待っていたら会社が潰れてしまうので、何でもやろうと思って動いてきました。最初にやったのがコロナ対策用のアクリル板や消毒液、マスクの販売です。今は、日頃仕入先として取引しているランドオペレーターにも協力していただき、現地法人スタッフが厳選した高級食材を空輸して、私たちのお取引先に販売しています。
それから、自治体や企業向けにVTuber(2次元または3次元のアニメキャラクターをホストとするYouTubeチャンネル)を使ったプロモーションの提案もしています。
とにかく、お客様のところへ行かないと、私たちは商売にならない。しかし、コンタクトをとっても、「コロナだから来ないでほしい」とか「今来ても仕事の話はないよ」と言われる。ですから、輸入商材の物販はこれで儲けるためというより、お客様とコミュニケーションを取るためのツールとして考えています。感染収束後、旅行・イベント需要が復活した際、いの一番でお声がけしてもらうためにも、Keep in Touch(連絡を取り合うこと)を心がけています。
国の補助金にも問題がある
──他の旅行代理店も、同じような取り組みをして、必死に生き残ろうとしているのですか。
柏倉 HISさんは「満天ノ秀そば」という蕎麦屋さんをチェーン展開するなど、新規事業に積極的に取り組んでいますよね。また、中小の旅行代理店も水を販売するなど、なにかしらやっています。でも、大手の旅行会社はすでに関連の商事会社などがあって、輸入販売などもすでにやっているので、新規事業に取り組んでもうま味がないんです。
それより大手の旅行代理店は国の事業に応募して、その補助金で経営を維持していこうとしています。観光庁に550億円の補正予算(令和2年度第三次補正予算事業「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」)がついています。地方創生のための観光の誘致プランとか、災害が起きた地域の村おこしのプランをつくるという名目で地方公共団体・地域観光づくり法人と組んで応募すると、その事業に補助金が下りる仕組みになっています。