3度目の緊急事態宣言が発令された。今回は飲食への対策強化がさけばれている。感染拡大を抑えるためには必要なことだろう。だがしかし、美味しいものを食べたいという思いは、コロナと関係なく、人間の普遍的衝動である。そこで、こんな時だからこそ写真でおいしい料理を楽しんでもらいたい。
今回は、ホテル評論家である私が、仕事としてホテルグルメに向き合ってきた中で、心打たれた料理を、宿の写真と共に紹介する。
※本記事の取材は、まん延防止等重点措置及び緊急事態宣言発出前のものであり、営業内容には変更の可能性があります。実際の利用に際しては宣言解除後に最新の状況を確認してください。
LOQUAT西伊豆(静岡県伊豆市)
「タケル クインディチ」の「鰆のオーブン焼き」
https://loquat-nishiizu.jp/
300年の歴史を持つ屋敷をフルリノベーション。イタリアンダイニング、ジェラートショップとベーカリー、宿が一体となった施設。1日2組限定で、宿泊施設である2つの蔵は露天風呂に大きなスペースを割いており、贅沢な空間に仕上がっている。徹底したオールインクルーシヴで、ミニバーでは泡もワインも何度も追加できる。
ディナーはイタリアン。北鎌倉にあるイタリアンレストラン「タケル クインディチ」が出店し、「アロマフレスカ」の元シェフ、大関さんを迎えて「LOQUAT西伊豆」にオープンした。伊豆という場所柄、素材の旨みをそのまま生かすことをモットーとし、ガーリックもオイルも感じないイタリアンの決め手は火加減と塩加減という。火加減でいえば、鰆のレア度に驚いたが、絶えずオーブンから出し入れして調整しているそうだ。
ザ・プリンス 箱根芦ノ湖(神奈川県箱根町)
「メインダイニング ル・トリアノン」の「魚介のマリネと彩り野菜のグレッグ コリアンダー風味 寄木細工見立て トマトドレッシング」
https://www.princehotels.co.jp/the_prince_hakone/restaurant/trianon/
ホテルってこうだよなぁとあらためて思う。いま造れと言われてもきっとできない、年月を経てきた年輪のような魅力が「ザ・プリンス 箱根芦ノ湖」にはある。決して奇をてらわない懐の深さがあり、疲れない、気を張らなくてよいホテルだ。
「ザ・プリンス 箱根芦ノ湖」のディナーといえば、ふだんは和食派の私でも、断然フレンチの「メインダイニング ル・トリアノン」を選ぶ。何メートルあるんだろうという吹き抜けは荘厳そのもの。芦ノ湖を望む大きなガラス窓も圧巻。夕刻の湖面から漆黒の湖へと変化する時間の移ろいもダイニングのエッセンスだ。魚介のマリネ、真鯛の白ワイン蒸し、牛フィレというフレンチの王道のようなコースはまさに“プリンスホテル”のイメージ。一方、見たことのないワインがペアリングされるという計算された異端ぶりにはワクワクさせられる。