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カープ背番号14の大先輩・外木場義郎さんから大瀬良大地投手へのエール

文春野球コラム ペナントレース2021

「カープで唯一、完全試合を達成した投手を知っていますか?」。エース・大瀬良大地投手に質問をぶつけてみた。「もちろん! 外木場さんだよね。完全試合、ノーヒットノーランを達成された背番号14の大先輩です!」。即答だった。

 外木場義郎。長いプロ野球の歴史の中でも15人しか成し遂げていない“完全試合達成者”の1人。特筆すべきは完全試合1回、ノーヒットノーランを2回マークしていること。合計3度のノーヒットノーランは外木場さんと沢村栄治さんの2人しか記録していない。沢村さんは完全試合を達成しておらず、球界ナンバー1・パーフェクトピッチャーを決めるなら外木場さんと言っても過言ではないだろう。

大瀬良大地 ©文藝春秋

大瀬良「1度は経験したい思いはある」

 ちなみに、外木場さんが初めてノーヒットノーランを達成した試合の相手投手をご存じだろうか? 答えられた方は筋金入りのカープファン! いや、外木場ファンかもしれない。

 正解は、2代目ミスタータイガース・村山実さんだ。1965年10月2日、甲子園球場で行われた阪神-広島戦。当時、外木場さんは実働1年目のシーズン。先発ローテーションの一員ではなく中継ぎで待機をしていたが、先発予定の投手が試合前にケガをしたため急きょスターターを務めた。その試合でノーヒットノーランを達成し、パーフェクトロードを歩み始めたのだが、試合後のマスコミとのやり取りは未だに語り継がれている。

 本人いわく当時は無名だったそうで、1人の記者が言葉を投げかけた。「こういう記録を達成する人は(選手寿命が)短命の方が多いですから頑張らないと」。このコメントを聞き20歳の外木場さんは言葉を返した。「なんならもう1回やりましょうか?」。その後、完全試合とノーヒットノーランを記録し、15年間プロ野球の世界で活躍を続けた。「今ならそんな言葉は出しませんよ!」。先日、76歳の誕生日を迎えられた外木場さんは笑いながらあの時のことを振り返った。

 誰もが達成できるわけではない完全試合やノーヒットノーラン。「1度は経験したい思いはある」。現カープのエース・大瀬良投手は包み隠さず言い切った。「ピッチャーをやっていればみんな目指すところだと思う。毎試合ヒットを打たれずに終わることが最高だが、これが難しい。達成するのは本当にすごいこと」。その難しさを痛感した。奇しくもこの原稿を書いているタイミングで、オリックス・山本由伸投手がカープを相手に7回まで完全投球。8回に主砲・鈴木誠也選手のヒットで大記録達成を阻止したが、改めて外木場さんのすごさを実感した。