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広島・栗林良吏が継承する“グラブの中のウンチ星”の系譜

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/06/26
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栗林はどのような経緯でウンチ星を導入したのだろうか

 しかし、中には「何だかよくわからない」というタイプの刺繍が存在する。カープで一番よくわからないグラブ内刺繍、それはルーキー守護神・栗林良吏の試合用グラブではないだろうか。そこに刺繍されているのは、「金色のウンチと星のマーク」である。

緊迫した場面でもグラブの中はウンチ星

 とは言え、この栗林のウンチ星を見た時、さほどの驚きは感じなかった。というのも、数年前に同じデザインの刺繍を見た事があったからだ。2017年、DeNAにドラフト1位指名された東克樹のグラブ。ここにも同じく、ウンチ星が輝いていた。

 当時の新聞取材に対し、「金ウンと白星ですよ。全部のグラブに入っていますよ」と刺繍の意味を答えていた東(※注3)。いっぷう変わった選手と評判になったが、別の記事を見てみれば、大学日本代表で一緒だった1学年下の栗林(当時名城大3年)のグラブを見て導入したことが書かれており(※注4)、何と東のウンチ星の出どころが栗林だったのである。

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 では栗林はどのような経緯でウンチ星を導入したのだろうか。カープ公式サイトにおいて栗林は、「大学時代のコーチの山内さん」がずっと入れていた刺繍を受け継いだと語っている(※注5)。「山内さん」とは、中日、楽天に在籍した山内壮馬のことだ。山内は今後名城大のコーチとして多くの選手をプロへ送り出すだろうが、一方でウンチ星刺繍という大きな影響をプロ野球に与えた。山内から栗林へ、栗林から東へ。ウンチ星は着実に球界にその系譜を繋いでいるのである。

 今シーズンの栗林の活躍は素晴らしい。この栗林の姿を見て、「自分もあやかりたい、よし、ウンチ星を刺繍しよう」と思う選手が増えるかも知れない。我々が試合中に決して見ることのできないグラブ内、そこに密かにウンチ星が増殖していったらどうなるのだろうか。恐ろしく思う一方で、少し楽しみにしてしまっている自分がいる。

ウンチ星の系譜 ©オギリマサホ

※注1:高野連ホームぺージ(http://www.jhbf.or.jp/rule/equipment/2010.html
※注2:野中ししゅう機販売株式会社ホームページ(https://www.nonaka-co.jp/basics/history.html
※注3:サンスポ・2018年2月15日(https://www.sanspo.com/article/20180215-2NVZYT5PBZOZLPDDE66VDK5YRA/
※注4:日刊スポーツ・2018年2月17日(https://www.nikkansports.com/baseball/news/201802170000049.html
※注5:カープ公式サイト(https://www.carp.co.jp/camp21/zayuunomei/0227.html

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