拝啓 涌井秀章様
盛夏の候、わくわくさん、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
愛の波動砲G.G.佐藤です。元気に過ごしていますか。僕は、今年1月からツイッターアカウントを開設し、ファンの皆様と交流する機会が増え、プロ野球をファン目線で楽しむという事を、引退から7年ほどが経過してようやく少し理解できたような気がしています。
そういったなかで、これまでは同僚、後輩としてしか見ていなかった涌井君は、ファン目線で観ると、さらに魅力的な選手であるということに気付きました。これは、ツイッターを開始してから得た僕の宝物です。正確無比な投球、深遠なる野球哲学。そして、こっちを向いて欲しいのに向いてくれないような、いけずなクールさ、ニヒルな横顔の一方で、楽天ポイント10万ポイントを獲得したときにチラっと見せた笑顔。東北楽天ゴールデンイーグルスの背番号16は、僕たちファンのハートを、まさに“鷲掴み”して離しません。もう、最高。
私生活でもポーカーフェイスだった涌井君
さて、ここまで涌井君は14試合に登板して6勝5敗。振り返れば、昨年は11勝4敗で最多勝を獲得し、今季は通算10度目となる開幕投手の大役を務めました。さらに今季は、ニューヨーク・ヤンキースからマー君こと、田中将大投手が復帰。昨年の最多勝投手と、メジャー帰りの楽天の大エースは、果たして共存共栄できるのかと、少し不安になった時期もありました。
涌井君は、マウンドでは常にポーカーフェイスであると知られていますが、私生活でもそうでした。西武時代、一緒にステーキのどん東大和中央店に行って、「美味しい?」と聞いても、無表情で食べ続けていたものです。 しかし、マー君と練習を開始した君は、豊かな表情を見せ、ちょっとマー君をいじりつつも、彼がチームに瞬時に溶け込めるようにがんばっていましたね。それに、「田中投手をライバルとして意識している。彼に負けないようにがんばれば、相乗効果で結果的にチームに貢献できる」という素晴らしいコメントもしていました。本当に成長したんだな。涌井君には透明の血が流れているのではないかと心配したこともありましたが、実際には、楽天のチームカラーであるクリムゾン・レッドの熱き血潮が流れていたのです。そのことに、とても驚くと共に、先輩としてこの上ない喜びを感じました。わくわくさん最高である。
さて、開幕投手を任せられた涌井君は、そこから完成されたピッチングを披露し、なんと5試合連続でHQS(ハイクオリティスタート・先発投手が7回以上を投げて自責点2以下に抑えること)をやってのけました。しかし、5月に入ると7日の北海道日本ハムファイターズ戦で今季初黒星を喫し、翌週14日のオリックス・バファローズ戦では3回5失点で降板という悔しい結果になってしまいました。しかし、エースは悪いときでもエースでいなければいけません。こういう状況でも涌井君は毎週のローテを守りきり、辛抱強く投げて白星を拾い、6月4日には通算150勝を達成しました。おめでとう。でも、涌井君の150勝のうち、100勝くらいは僕の勝利打点だったと思う(編集部注:5勝です)ので、感謝して欲しいです。
結局、涌井君は開幕から毎週金曜日に投げ続けました。しかし、さすがに疲労が溜まったのか、繊細なコントロールに微妙なズレが生じていたのかもしれません。それを見抜いたのは、かつて同僚でもあった石井一久監督でした。石井監督は、涌井君に調整を命じ、2週間の猶予を与えてくれました。涌井君ほどのキャリアがあれば、言わずもがな、自分が何をすべきか分かります。きっと君が培ってきた調整法で、しっかりと体を整え、休養も十分に取ってきたのでしょう。こうして、僕にとっては果てしなく長い2週間が経過しました。