首都圏でもまったく買い手がつかないマイホームも
しかし、すでに地方は激しい人口減少と高齢化の進展で大都市への人口供給機能は急激に縮小を始めている。またすでに鉄道沿線の郊外部でマイホームを取得してきた先代たちは高齢化し、今後は都市郊外部を中心に大量の相続が発生することが予測されている。相続の発生は当然、売却や賃貸に回る土地が激増することを意味している。
この環境の変化を前提とした場合、さてこれまでの「成功の方程式」は機能し続けるであろうか。不動産を「投資」として考える場合、当たり前だが「買ったら売る」というのが投資行動だ。実は郊外部にマイホームを買っていまだに所有し続けている人たちの「含み益」はバブル期を頂点に急速に萎み、それどころか多くのマイホームが売りに出しても車一台分くらいの価格でしか取引できない、あるいはまったく買い手が付かないような状況に陥っている事例が、千葉や埼玉といった首都圏ですら生じているのが実態だ。
そうした意味で現在、マイホームを「投資」という観点から取得するには国内外のマネーが流れ込む都心部のごく一部のエリアや、郊外部でも主要ターミナル駅の「駅近マンション」などごく一部の物件に限られるのだ。そしてその物件とて、マーケットの動向をよくみて、タイミングよく売却しなければ投資としての利益を得ることはできないのだ。相場は常に魔物のように動いていくからだ。
「働き方改革」という口当たりのよい宣伝文句に惑わされないで
マイホームに限らず、サラリーマンの副業としてのアパート投資やワンルームマンションを勧める動きもある。低金利でばんばん貸してくれる銀行や、「働き方改革」などという口当たりの良いスローガンに踊らされて「不動産で一儲け」などと考える際にも、この昔取った杵柄ではないが、過去の成功の方程式が現代にも当てはまるような錯覚がサラリーマンの人生を狂わせるのだ。
人口爆発もない、むしろ少子高齢化が進展する日本の不動産マーケットで「勝ち抜く」には複雑な方程式を解くための相応の鍛錬が必要になっていることは言うまでもないのだ。
株や債券投資でも結局勝利するのは機関投資家などのプロである。素人はマーケットでは食い物にされるというのが残念ながら投資という世界だ。本当は「会社への通勤」だとか「子供の学校」など自分たちの生活基盤を理由としてマンションを選んでいるのに、ついでに「儲かりたい」と考えるのはプロからみれば「笑止」なのである。