7月30日におこなわれた首相会見では気になることがあった。菅首相が感染急拡大の原因を「デルタ株の猛威」と説明したのだが、そこには「デルタ株がすごいから仕方ないよね、誰が首相でも同じだよね」というニュアンスが漂っていたこと。
すると案の定、会見の最後に「デルタ株を見くびっていたことが、感染爆発の背景にあるんじゃないか」と水際対策の不備についてきっちり記者に迫られていた。※Jane's Defence Weekly東京特派員の高橋浩祐氏。
デルタ株の水際対策に失敗
それに対し菅首相は「水際対策というものも、通常の6日とかそれぐらい延長して、しっかりと入国した人についてはチェックする体制という水際対策というのはきちんとやっています」(首相官邸HPより)。
実はデルタ株の水際対策の「失敗」についてはすでに指摘されていた。『文藝春秋』8月号で分科会の小林慶一郎氏が書いている。
日本でデルタ株の脅威が認識されたのはGWの頃。小林氏はその頃に停留を6日間ではなく14日間にしたほうがいいと提言していた。
「危機感が募り、早急に水際対策の強化をするよう分科会の場で強く主張しました。インド等からの入国者の停留を、豪州、NZと同じように14日間にすべきだと言ったのです。」
しかしこの提言は「マンパワーが足りないことが大きなネック」だとして潰され、「幻の提言」になった。
記事のタイトルは『分科会メンバー手記 コロナ第4 波「菅官邸の陥穽」』。水際対策の不徹底が第5波を招く、とある。その通りの展開となっている。この点の責任論だけでも気になる。
ほんとうは怖い菅首相の「楽観主義」
それでも菅首相は楽観的だ。国民が楽観バイアスになるのも首相が楽観的だからか。しかしこの「楽観」はよく調べると怖い。
首相が見ているシミュレーションは、新規感染者がだいたい2000人以下の範囲で収まるものだったという(朝日新聞デジタル7月31日)。
楽観シナリオが首相に集まる理由について、首相周辺は「首相がそういうデータを出せというから、そうなる」と語っている。これは楽観というより逃げだ。都合のいいものだけ信仰だ。