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 そんなユルい相手ならいけると思ったのか、安倍が辞意表明すると菅・二階のたたき上げ連盟がすぐさま手を挙げた。少し言動を追っていれば菅の野心なんて素人にも丸見えだったのに岸田派(宏池会)内では「菅氏の動きは意外だった」との声が漏れたという(毎日新聞2020年8月31日)。宏池会ごとのんきだった。

 さすがに今までのやり方だと無理だと思ったか、今回の岸田は仕掛けている。

『二階幹事長の再任否定』(日本経済新聞8月27日)

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『コロナ対応 首相と一線』(東京新聞8月27日)

 出馬会見では、たぶん良くなるだろうではコロナに打ち勝つことはできないと語った。

「東京新聞」8月27日の紙面

《暗に首相を批判した。念頭にあるのが、感染状況を巡って楽観的な発言を連発する首相の姿勢なのは間違いない。》(東京新聞・同)

岸田文雄が早々に出馬表明した理由

『岸田ビジョン』(講談社)を読むと、昨夏の時点で「『聞く力』を持つリーダー」とか「分断から協調へ」と書いているので菅だけでなく安倍も批判的にみていたことがわかる。アベノミクスに懐疑的な記述もある。ところが現実の岸田はというと……。

『自民・岸田政調会長、皇統と憲法で安倍保守路線継承へ 派閥の理解得られるか』(産経ニュース8月25日)

 安倍頼みなのである。フニャフニャの真骨頂。『岸田氏、安倍・麻生両氏に秋波』(日経新聞8月27日)とも。これでは万一首相になれても「第三次安倍政権」と言われるだけではないでしょうか。予想しておきます。

 ただ、フニャフニャしていた岸田氏が今回は早々に手を挙げた点は気になる。それはなぜか? こんな事情もあるようだ。

《岸田派座長で参院議員だった林芳正・元文部科学相が、将来の総裁選出馬を視野に、次期衆院選に山口3区からくら替え出馬することも、岸田氏の判断に影響したようだ。》(読売新聞8月26日)

 ここらで勝負しないと派閥の後輩に総裁候補として逆転されてしまうという危機感。

安倍晋三、ハヤシライスは食べない説

 調べてみると林芳正は今後の自民党のキーマンでもあるようだ。くら替えする山口3区は二階派の河村建夫が現職。なので二階のトシちゃんは「売られたケンカは買う」と激おこ。さらに山口では「林家」と「安倍家」は中選挙区時代から長年のライバル関係にある。

《安倍陣営ではかねて「カレーライスは食べてもハヤシライスは食べるな」「ゴルフで森に打ち込むのはいいが、林には絶対打ち込むな」と対抗意識をむき出しにしてきた。》(信濃毎日新聞7月11日) 

 すばらしすぎる格言。安倍晋三、ハヤシライスは食べない説。

 現在の小選挙区では安倍家とは一応すみわけができるが《総理総裁を目指す林氏と首相退陣後もキングメーカーとしての野望をぎらつかせる安倍氏。両家の対立が再燃するかもしれない》とも(信濃毎日新聞・同)。

 安倍と二階を敵に回しても野心を隠さない林芳正。フニャフニャ岸田さん、このままだと食われちゃいそう。その前に国民の注目を集めるコロナ対策を打ち出せるか、地方と若手の票を自分が食えるか。しばらく注目です。