移り気で逃げ足の速い海外の投資マネー
都市未来総合研究所の調査によれば、2017年度上期(4月から9月)における外資系法人による日本の不動産への投資額は6572億円に達し、前年同期比でなんと3.3倍にもなっているという。いっぽうで、国内での投資マネーの中心である不動産投資信託(J-REIT)への投資額は今年になって大幅に縮小しているのが現実だ。
実は昨年はこうした動きとは真逆で、外資系法人が「買い」に入らず、「売り」にまわり、これを国内勢が買うという構図にあった。この2年間でこれほどまでに投資家の動きが変わるという姿は、少なくとも不動産投資のプロでなければなかなかわからないというのが正直なところではないだろうか。
投資マネーはそれほどまでに「移り気」なのである。特に海外マネーは常に地球全体を睥睨して「相対的」に投資妙味のある国や地域にカネを突っ込むのが習性だ。つまり今年は日本の低金利が続き、しかも円安状態が続いている。政治も治安も安定しているというのが彼らが投資する主な理由であり、別に日本のオフィスマーケットや住宅マーケットの将来性や設備投資過剰などを気にしているわけではないのだ。「ちょっと投資利回りが低くなりすぎてだめなんじゃね?」と考えるJ-REITなどとは違った発想をするのだ。
投資家が「演出」するバブルに騙されるな
彼らは投資をあくまでも「数字」でみる。それでみると日本の不動産利回りは、日本でもっとも安全とみなされる日本国債のレートとの差(これをイールドスプレッドと呼ぶ)が欧米やアジアの諸都市に比べ相対的に大きい、つまり余力があるという理由だけで投資してくる。ちなみにこの国債レートとの差をリスクプレミアムともいう。リスクプレミアムが大きいということは、それだけ投資が「安全」ということを意味するのだ。
今でも思い出す。私がJ-REITの代表をしていたころのことだ。私のREITに投資しているロンドンの投資家に、取得した商業施設の内容を説明しているとき、彼は細かな数値については厳しい質問をぶつけてきた。しかし、その施設は大阪にあったのだが、大阪のマーケットについて説明しようとする私を制して「ああ、場所はどうでもよい。良い買い物じゃないか」と言い放った。あのマネジャーのセリフが蘇ってくる。
投資マネーは「移り気」だ。彼らは日本に根を下ろそうなどと1ミリも思ってはいない。と同時に逃げ足も速いのだ。彼らが買っているからといって、調子に乗ってはいけない。いそいそとマーケットに出てきた我々に売りつけて逃げるのはいつも彼らなのだ。投資家が「演出」するバブルに騙されないことだ。