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ホームレス経験から得た「airRoom」の着想

――随分と特殊な人生を歩んでいますよね。起業を志したのはいつですか?

大薮 起業自体は高校生の時に考えました。「airRoom」の原型は既にその頃から頭の中にあって。自分がホームレスをやっていた時、とにかくキツかったのが、モノを購入するための「まとまった初期投資資金」がなかったことです。

 当時、もし少額で借りられるサービスがあれば、家具だろうが小型の扇風機だろうが、生活を少しでも豊かにする術があったと思います。コスプレ衣装のせどりを通しても思いましたが、「中古品を使うこと」に抵抗がある人は、実はそれほど多くないというのが実感です。

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©️文藝春秋

 また、もう1つホームレス時代に辛かったのが、定期の収入がなかったことでした。そこから着想して、「使わなくなったものは必要な人に貸して、それでお金が入る仕組みが必要だ」と思ったんです。買ったはいいけどタンスの中で眠っていて、有効活用できていないモノって多いですよね? そうした無駄をなくす循環が必要だと思っています。今は「企業の製品を個人に貸す」という仕組みだけですが、今後は「個人間の貸し借り」もできるサービスを検討したいと思っています。家具だけでなく、衣類とか、観葉植物などのインテリア、アート作品などにも広げていきたいですね。

反骨精神と自暴自棄の境界

――会社はいま、まさに順風満帆だと思います。プライベートではどのような家庭を築いていきたいと思っていますか?

大薮 普通の温かい家庭を作りたいです。早々に結婚して身を固めたいですよ。子どもには「尖った教育」ではなく、自分が公園で眺めていた高校生のように、普通の生活を送って欲しいです。確かに私が「起業しよう」と思ったのはホームレス時代に決めたことですし、「その経験があってこそ今の自分がある」と思うこともあります。ただ、やっぱりそんな苦労を学生の時点でする必要はないんですよ。

 イレギュラーな環境で育ったので、それで生まれた反骨精神はあると思います。でも、それが幸せかというと…「わかんないな」と思います。私は人に厳しく当たってしまうこともあると自覚していますし、そういう風になってしまうと世の中一般では暮らしにくいと思います。

――恵まれない環境で育ち、自暴自棄になってしまう人も多いと思います。反骨精神と自暴自棄、2つの線引きはどこにあると思いますか?

大薮 難しいですね…実際、私だって自暴自棄になってもおかしくなかったと思いますし。私の会社に出資してくれた人からも創業時に「尖るのは良いけど、組織マネージメントでは苦労するよ」と苦言を呈されたこともあります。

©️文藝春秋

 ただ、その方は同時に、「いまこうして1000万円をあげるけれど、このお金は良くも悪くもあなたの人生を変える選択肢になる。このお金で不幸せになって欲しくはないから、何があっても絶対に、この先の面倒はみるから」とも言ってくれました。そういった“無償の愛”のようなものに、人生のどこかで出会えるかどうかが重要なのかなと思っています。