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高校生でホームレス→大学受験は「予備校のゴミ」で… “勝ち組”転身ベンチャー社長が語る「親ガチャ論」と「幸福観」

「中学3年の時、親が突然姿を消しました。一緒にホームレスをしていた弟も今は消息不明で、何をしているかはわかりません」

 自らの悲運や両親への恨みを強調するでもなく、淡々と心境を語り始めたのは、現在「エアールームテクノロジーズ」の社長を務める大薮雅徳(26)だ。

業界最注目の若きIT経営者

 2018年に始めた“家具・家電を月額で借りられる”サブスクリプションサービス「airRoom」は、現在登録会員数が4万人を超えた。「Forbes 30 Under 30 Asia」にも選出されるなど、大薮社長は業界最注目の若きIT経営者の1人だ。

 洒落たデザインで人気のバルミューダや、パナソニックなどとも家電分野で提携。家具分野は大塚家具のほか、全国の大小60社以上の企業と提携している。「エアールームテクノロジーズ」はコロナ禍で小売業の不振が続く中、企業とユーザーを直接つなげる“貸し借り市場”の新たなハブとして、急成長している。

 大薮社長は、現在一等地のタワマンに住む若き“勝ち組社長”としての顔も持つ。

 だが、10年前には両親が突如、失踪。大薮社長自身も家賃を払えずに家を追い出され「ホームレス高校生」として段ボールハウスで苦学する日々を送っていた。

写真はイメージ ©️iStock.com

「仕事をサボってリストラされるとか、自分の努力が足りなくて失敗するのは仕方ないと思います。ただ、自分も含めて本来被る必要のなかった“不条理”を受ける人たちも少なからずいる。そのせいで機会に格差が生まれてしまう状況を変えたいと思ったのが、ビジネスを始めたきっかけでした――」

 自身の過去をそう振り返る大薮社長にその言葉の真意を聞いた。

©️文藝春秋

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部活は禁止、食事代を置いて3日帰ってこない両親

――もともと大薮社長が育ったのは、どのようなご家庭だったのでしょうか。

大薮 名古屋市緑区で生まれ育ち、父は自動車部品メーカーを経営する2代目でした。両親と1つ下の弟と4人で、ごくフツーの暮らしをしていたと思います。ただ、いま思えば父は会社の創業者である祖父の仕事の手伝いをしていただけで、自分に取り柄がなく、コンプレックスを抱えていたように思います。

 日ごろから私には「普通と違うことをやれ」と言い、学校の部活に入るのも禁止されていました。こっそり小学校では野球部とバスケ部に入ったのですが、大会で遠征する時にばれて退部させられました。その代わりに「これからの時代に来るから」という父の勧めで、パソコン教室に通わせてもらいました。パーツからパソコンを組み立てたり、プログラミングをかじったり…『遊☆戯☆王』のカードを売買するサイトをつくったりして、主にネット上で学校の友達とは交流していましたね。友達は少なかったですし、周りから見れば根暗の代表みたいな感じだったと思います。

 両親は夜勤だったのか、それともただ遊んでいたのかわかりませんが、3日ぐらい家に帰ってこないこともよくありました。朝起きると、1日の食事代の500円が机の上に置いてあるんです。弟と合わせて1000円。コスパが良かったので、コンビニの6本入り100円のスティックパンを買って昼と夜に分けて食べていました。ゲームとかおもちゃも買ってもらった記憶はないですね。