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高校生でホームレス→大学受験は「予備校のゴミ」で… “勝ち組”転身ベンチャー社長が語る「親ガチャ論」と「幸福観」

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ホームレスのまま「落ちているもの」で勉強し大学進学

――そうした生活の中、高校にはどれくらい通っていたのでしょうか。

大薮 入学式はいけませんでしたけど、たまに通っていましたよ。クラスメイトからすれば「誰?」という感じだったと思いますが…。数人、話し相手はできましたけど、彼女の話や部活の話題が中心だったので、そもそも校内の人間関係がわからないし、ついていけませんでした。

 振り返ると、自分の住んでいる公園のそばを高校の同級生が通るたびに「羨ましいな…」と思っていましたね。でも、自分がホームレスだとは誰も卒業まで知らなかったと思います。シャワーは公園の水道で、服はずっとそこで洗って、数着を着回しました。楽しい記憶はないですし、遊びに行ったこともありません。食べるのに必死だったので…。

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©️文藝春秋

――高校卒業後は法政大学に進学されています。ホームレスをやりながら、勉強はどうしていたのでしょうか。

大薮 本格的に受験勉強を始めたのは高3の夏からです。最初は公園の近くにあった予備校のゴミ箱から、生徒が解答したプリントを漁ったり、手当たり次第に「落ちているもの」で勉強しました。ある日、予備校の校長先生にゴミを漁っているのがバレて「そういうことはやめてくれ」と怒られました。ただ、結局事情を説明したら「出世払いでいいから」といって、テキストもくれて、授業にも通わせてもらえたんです。今でも付き合いのある数少ない友達もできましたし、当時の校長先生にはとても感謝しています。

 小学校からプログラミングをかじっていたので、何となく自分は理系だと思っていました。ただ、数学は積み上げが必要な教科で、伸ばすのは無理だと諦めました。都内の私立大で一番学費が安いのが法政大学の経済学部だったので、そこに絞って教科は英語、日本史、国語と詰め込み系の科目に集中して、無事に合格することができました。

 ただ、国分寺にアパートを借りて上京したんですが、結局、学費が払えなくなってしまった。入学早々に始めたIT企業のインターンもあったので、1年も経たずに中退してしまいました。個人的には大学で学べることはとても多いと思っています。大きな志があって中退したわけではなくて、私の場合は単純にお金がなかっただけです。結局、インターンの経験も活かして4年間ベンチャー企業で働いた後に、2018年に起業しました。

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「兄ちゃん頑張れよ!」と言っていた弟の連絡先は今もわからず

――弟さんとは一緒に上京したのですか。

大薮 大学入学で上京したのは私だけです。当時は携帯電話も持っていなかったですし、弟の連絡先は今もわかりません。「じゃあ、兄ちゃん頑張れよ!」という感じで…名古屋を“卒業”して以降、会っていないです。弟はサバイバル能力が高いというか、親がいなくなった時もそれほど動じていなかったので、あまり心配はしていませんが。

 親からは一度、資金調達をしてリリースを出した時に「金があるんだろ」と会社に電話がかかってきたようです。ただ、それっきりですね。特に折り返しの連絡はしていません。それぞれ、どこかで元気にやっているんだろうなと思っています。

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