法廷に現れた赤いウインドブレーカー姿の“女帝”
控訴審の話に戻ろう。
午後2時半。久々に公の場に現れた山本被告は細くて小さく、とても女帝という雰囲気ではない。明るい色に髪を染め続けたせいなのだろうか、長い黒髪は傷んでパサパサだ。しかし、時折傍聴席側に顔を向けた際の、とても鋭い目つきが印象的だった。先に入廷していた岸被告がちらちらと、山本被告の方に目を向けるのとは対照的に、山本被告が岸被告の方向を見ている様子は確認できなかった。
坊主頭が伸びたような髪型で、縁のあるメガネをかけた岸被告はジャケット姿だったが、対照的に、山本被告は赤いウインドブレーカーのような上着。黒や白の色が入るデザインはどこか“昭和”を感じさせた。
判決を言い渡す直前、根本渉裁判長に立つことを促された両被告は「はい」と発言し、山本被告は頭を下げた。
根本裁判長「判決を言い渡します。『主文、各控訴を棄却する』」
山本被告は沈黙。一審と判決が変わらないことに理解ができないのか、棒立ちしていた。両被告が着座を促された後、根本裁判長は判決文を1時間半にわたり朗読し続けた。
「肥満した女性に特化した風俗店で働いて金策するという名目で、高カロリーの食品を大量に食べさせた」
「いびきをかいて熟睡しながら糞尿を漏らしているなどと嘲笑していた」
耳を塞ぎたくなるような判決文が読まれる中、時折姿勢を変える程度で、淡々とした様子の山本被告。
その間、落ち着きがないのが岸被告だった。頻繁にマスク越しに顔を触ったり、メガネの位置を変えたりしていた。「定職に就かずに被告人山本に経済的に依存していた」と裁判長が判決文を読むと首をかしげ、「被告人山本は主導的、中心的な役割に相応した重い責任を問われるべきである」と読まれると2度にわたり頷く場面もあった。