2022年、NHK大河ドラマで三谷幸喜さん脚本の「鎌倉殿の13人」が始まります。俳優の小栗旬さんが演じるのは、鎌倉幕府(1180~1333)でナンバー2の執権として権力を振るった北条義時。

 実は、この数年、日本史の中では、比較的地味だった北条氏とその時代に新たにスポットライトが当たっています。2020年に発売され、「日本ゲーム大賞2021」に選ばれた「Ghost of Tsushima」(ゴースト・オブ・ツシマ)は、モンゴルが日本に攻めてきた元寇(13世紀)が題材。2021年1月には、松井優征さんの「逃げ上手の若君」(『週刊少年ジャンプ』)の連載が始まりました。主人公の北条時行は、鎌倉幕府が滅亡(14世紀)した際の当主、高時の息子で、日本中が敵となる世の中をどのようにサバイバルしていったのかを描いています。また、鎌倉幕府前史である『平家物語』もアニメ化されました。

「ゴースト・オブ・ツシマ」と「逃げ上手の若君」では、私も監修や解説としてお手伝いをしていることもあり、中世史の専門家として、「北条氏ブーム」についてしっかり考えてみようと思いました。

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日本史上に特筆すべきとんでもない武士

 そもそも鎌倉北条氏とは何者なのでしょうか。北条氏の初代である時政は伊豆国の北条(現伊豆の国市)の武士で、娘(北条政子)が鎌倉幕府初代将軍の源頼朝の妻になったことで世に出ました。これだけですと、「娘の力を使って偉くなっただけか」と思われてしまいますが、実態は全く違いました。時政は、ライバルの武士である梶原氏、比企(ひき)氏を流言飛語と騙し討ちで殲滅し、幕府のナンバー2にのし上がっていったのです。

 義時は、その父を追放して実権を握ると、なんと将軍の源実朝を暗殺させ、果ては当時の天皇家の最高権力者である後鳥羽上皇と承久の乱(1221年)を戦って(戦争自体は上皇側が仕掛けたものですが)勝ってしまった。日本史上に特筆すべきとんでもない武士なのです。