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《費用目安は100万円》「親を捨てたい」という声の高まりで5年の間に相談者数が5倍に増加…終活をサポートする“家族代行サービス”の実態

『絶縁家族 終焉のとき―試される「家族」の絆』より #1 

2022/01/10
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【契約者が必ずすること】

 

*本人が介護施設に入所した時に、身元保証人の手続きと金銭の管理は家族がする。

 

*終末期医療における事前指示書

 延命治療はどこまでやるかの事前指示書を預かり、いざという時に家族の希望を病院側に伝える。医師は電話で家族の最終決断を確認する。

 LMNの特徴は、身元保証サービスや介護施設入所の際の保証人代行サービスは行っていないことである。

 保証人代行サービスや身元保証をめぐっては、高齢者を騙して高額な契約金を搾取するトラブルに消費者庁が警鐘を鳴らしている。

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 では、どんな家族代行の依頼がくるのか、具体的な例を聞かせてもらった。

ワンオペ・ダブル介護に疲れ果てた一人娘

 A子さん(40代)のことでケースワーカーから相談が持ち込まれたのは、5年前のことだった。A子さんは一人娘で、夫と二人の娘の四人家族。

 その一年前に父親は脳梗塞で倒れ、要介護4で特養老人ホームに入ることになった。母親の認知症がそれから始まった。

 近所の家の花を勝手に採って、近所から苦情の電話が続いた。また徘徊して警察に保護されたことも何度もあった。

 一人暮らしから母親の認知症が急に進み、目が離せなくなってきたのである。

 夫は義理の間柄なので「われ関せず」で、とくに協力する姿勢も感じられない。

 当時、彼女は父親の介護に続き、実家に住む母親の介護を一人で抱え、疲れ果ててノイローゼ気味になっていたという。

 とにかく母親とA子さんを引き離すのが目的で、遠藤(敬称略)に依頼があった。A子さんはそのときやつれ果てて、うつろな感じだったという。

©️iStock.com

 緊急を要するということで、3日間で入所できる施設を探し、有料介護施設入所を手配した。母親には検査入院と説得して入ってもらった。

「今、お忙しいみたいですよ」と答えると「そうなの……」

 虐待とまではいかないが、子ども時代から自分の好きなことをさせてもらえない束縛があり、A子さんは「母を好きではない」と自分の気持ちを語っていたという。

 最初の頃は母を拒絶しながらも捨てきれなくて、どこかで気にかけているように思えた。実家とA子さんの家は車で15分ほどの距離。一人娘ということで、近くに住むことを選んだのかもしれない。

 入居後しばらくは母親も家に帰りたがっていたが、一人暮らしが淋しかったのだろうか? 人との会話を楽しむようになり、施設での生活にも慣れていった。娘が来ない理由を聞かれて、

 「今、お忙しいみたいですよ」と答えると、

 「そうなの……」と大抵の親と同じように、それ以上は聞こうとはしない。

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