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【被告に懲役20年の判決】《大阪女児誘拐》助けた女の子に「余計なことをしないで」と言われ……伊藤容疑者の正義感と挫折

genre : ニュース, 社会

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 インターネット交流サイトで知り合った茨城県の女子中学生と大阪市の女児を誘拐したとして、未成年者誘拐罪などに問われた栃木県小山市の無職伊藤仁士被告(37)の判決が2022年3月22日に水戸地裁であり、中島経太裁判長は「未熟さにつけ込んだ卑劣な犯行」として、被告に懲役20年を言い渡した。

 当時、取材班は現地で関係者を取材。伊藤容疑者の学生時代の様子や、アルバイト先だった自動車学校での働きぶりなどの証言を得ていた。当時の記事を再公開する。(初出:2019年11月24日 年齢、肩書などは当時のまま)

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 大阪市の小学6年生の女児が誘拐された事件で、未成年者誘拐の疑いで逮捕された栃木県小山市の伊藤仁士容疑者(35)の自宅で、11月24日(日)午後、家宅捜索が行われた。13時過ぎ、警察のトラックが現場に到着し、青いビニールシートによる目隠しの衝立を立て始めた。14時半頃、立会人の車が到着。14時40分、大阪府警の捜査員が入った。

24日に行われた家宅捜索 ©文藝春秋

「この日の朝、伊藤容疑者は大阪府警に送致されました。小山駅から新幹線でしたが、伊藤はいったん普通席に座らされた後、多目的室に入れられた。移動する際は一般客が降りてから。つねに捜査員に囲まれていて、フードで顔を隠し、記者の問いかけには無言でした」(社会部記者)

送致される伊藤容疑者 ©共同通信社

 現場付近は新興住宅地で、これから家を建てるという土地も多い。外で遊ぶ子供の姿もよく見かけるが、「伊藤家に子供(容疑者)がいたことには気が付かなかった」(近隣住民)という証言もある。

自動車学校の正社員の誘いに「うーん」

 伊藤容疑者がかつてアルバイトをしていた自動車学校の社長はこう話した。

「半年以上1年未満ほど働いていた。無断欠勤はしたことがなく、勤務態度はいたって真面目で正義感の強い子だった。主な仕事は教習生の送迎。他は雑務やコース管理などを担当していました。辞めるときもトラブルがあったわけではない。しっかりと働いてくれていたので、『正社員になってほしい』という話をしたところ、『うーん』と悩んでいました」

 この自動車学校には、幼い頃から伊藤容疑者が遊びに来ていたという。

「仁士君が7歳くらいのときに弟と教習所によく遊びに来ていた。しりとりや車の絵本を読んでいました。明るくて弟の面倒を見て、母親を支えようとしていた。弟が道に飛び出しそうになると、仁士君が注意していた」(近隣住民)

伊藤容疑者が働いていた自動車学校 ©文藝春秋