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風俗はセーフティネットではない

 数年前、生活保護申請に駆け込んだシングルマザーに「風俗で働け」と言った自治体が福祉業界で話題になった。だが現在、キャバクラ、風俗、AV女優、売春などは一般女性の志願者が増えすぎ、圧倒的な女性の供給過剰にある。価格は暴落、貧困女性のセーフティネットとしての一面は完全に失われた。よほど容姿などのスペックが高くない限り、貧困シングルマザーは客単価が1万円以下の格安店でしか採用されない。

 性風俗は2005年の風営法改正で店舗型から無店舗(デリヘルなど)に移行し、届け出制となって実質合法化したことから激増した。女性の供給過剰、性風俗店の増加、そして少子化のため、1店舗あたりの男性客は減少。だから出勤しても満足に客はつかない。完全出来高制なので、待機時間も含めて時給計算したら最低賃金を割るケースも増えている。

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客が2人ついても日給8000円

 デリヘルでは出勤して1日待機しても1人あたりの客数は平均2人程度だ。男性が支払う金額60分8000円のうち、売上が店側と折半なら1人4000円にしかならない。運よく客が2人ついても日給8000円にしかならない。

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 筆者が最近よく出会うのは、学費や生活費を稼ぐために風俗や売春に身を投じる貧困家庭や貧困シングル家庭で育った子供たちだ。澤村桃香さん(仮名、20歳)は中堅私立大学の3年生。児童養護施設育ちで、親はいない。昼間は中小企業でデータ入力の仕事をしながら、夜間大学に通う。空いた時間は性風俗で働き、さらにツイッターで「パパ活」をして、数人の中年男性を相手に売春をする。

「アルバイトだけでギリギリ生活は送れます。けど、どうしても学費が払えない。それは高校生の頃からわかっていたことで、1年生の春には風俗に行きました。デリヘルです。出勤は週1日くらい。稼げるのは月6万~10万円程度。稼いだおカネは、全部貯金して学費です。本当にカラダを売るしか手段がありません」

 真顔で、そう語る。デフレが進行した現在、風俗や売春がセーフティネットになるのは若い女性だけだ。貧困化の引き金となった労働者派遣法改正から20年が経ち、現在はその子供たちが主流となる。日本の子供の貧困率はOECD加盟国34カ国中10番目という状況で、世界的にも貧困が進行する国と認定されている。

 もはや貧困問題への国を挙げた取り組みは、待ったなしの深刻な状況にある。