昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2018/05/05

「子供のお年玉も、全部使ってから出直すように」

数日前、わらにもすがる思いで生活保護の申請のために福祉事務所を訪ねたが、

「児童育成手当が出たばかり。『育成手当、それに子供のお年玉も、全部使ってから出直すように』と追い返されました」。

 彼女は自分と子供に対する夫のDVで2年前に離婚。その後精神障害を発症したが、なんとか介護職として勤めていた。また、暴力に支配されて育った小学校低学年の子供は、学校で頻繁に問題を起こし、学校側から転校を促されている。

 全国で約123万世帯にのぼるシングルマザーの貧困は深刻だ。全国母子世帯等調査によると、母子家庭の平均年間収入は223万円(平均就労収入は181万円)。全世帯平均所得545万円(国民生活調査)、児童あり世帯の平均所得707万円を大きく下まわる。相対的貧困に該当する母子世帯の子供たちが“子供の貧困”のメインであり、6人に1人の子供が該当するとされる。

©平松市聖/文藝春秋

「子供6人に1人が貧困状態」の実感

 筆者は2015年から女性を中心に貧困取材をしてきた。「子供6人に1人が貧困状態」というデータは、筆者の実感の通りだ。あらゆる場所に貧困母子家庭はあり、増加傾向にあることは間違いない。貧困の実態はそれぞれだが、多くは近隣に実家や親戚がなく、誰も助けてくれる人がいない環境(関係性の貧困)にある。老朽した団地やアパートに住み、母親は無理をしてダブルワークをする。最低賃金に近い非正規雇用のサービス業で10万円前後の就労収入、それに児童手当、児童育成手当を足してギリギリ最低限の生活を送る。元夫から養育費が滞りなく支払われるのは少数で、本当に苦しい状態の家庭が多い。

 貧困は、満足にご飯を食べられない、子供が修学旅行に行けない、給食費が払えない、進学できないという経済的な問題だけでは終わらない。貧困母子家庭の女性の多くは夫のDVやモラハラに耐え切れず離婚している。篠崎さんのように精神疾患を患い、安定して働けない人も多い。母親は職場や子供との人間関係がおかしくなり、さらに悪い男に騙されたり、子供が円満な学校生活を送れなかったりする。また、社会も彼女たちの貧しさにつけ入る。深刻な人手不足にある介護業界はシングルマザーを積極的に雇用するが、ブラック労働を強いる、規定通りに給与を支払わないという事業所は膨大にある。一度、貧困に足を突っ込んでしまうと、負の連鎖が止まらないのだ。