最終回が目前に迫るNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」。親子3世代・100年にわたる愛の物語は、どのような結末を迎えるのか。「週刊文春」はこれまで何度もカムカムについて報じてきた。最終回を控えた今、読み返したい記事を文春オンライン初公開する。文春でしか読めぬものがある――。(初出:週刊文春 2022年3月17日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)
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共演者が語る上白石の魅力
「『安子編』の撮影がひと区切りついた際の上白石さんの言葉は忘れられません。今も思い出したら泣けてしまうんですが……」
そう明かすのは、制作統括の堀之内礼二郎チーフプロデューサーだ。
初代ヒロイン・雉真安子(旧姓・橘)役を演じた上白石萌音(23)。14年、映画「舞妓はレディ」で初主演を飾った。上白石が“芸能界の父”と慕う周防正行監督が当時を振り返る。
「新人だったので、大勢のスタッフの前で演じるのに苦労するだろうと思っていたんです。でも、撮影に入ってみたらほとんど一発OKで。度胸というのとも違う、自然体でそこで演じることや歌うこと、踊ることが楽しくてしょうがないという感じでした。大谷翔平さんを見ていて、楽しそうに野球をしているなと思うことがありますが、彼女にも同じことを感じます」
今作の撮影でも、その飾らないスタイルは変わらない。橘家の祖母・橘ひさ役の鷲尾真知子(72)が語る。
「休憩時間と本番中の境なく、萌音ちゃんはずっと安子そのものでいてくれました。ひさがお汁粉を作るシーン(第6話)では、テストの時から『食べたい!』と言っていて、本番でカメラが回っても、アドリブで『食べてぇ』と笑顔で言っていました」
安子の娘・るいを演じた総勢10人ほどの子役たちとの接し方も同様だった、と前出の堀之内氏が続ける。
「るいと二人で大阪に向かう電車の場面(第22話)では、まだ赤ん坊のるいちゃんが手を伸ばして上白石さんの顔をそっと撫でてくれるんですよね。あんな奇跡的なアドリブが出たのは、上白石さんが舞台裏で抱っこして、常に母の安子として接していたからです。
安子が久々にるいを連れて『たちばな』に帰った場面(第17話)でも、るいを母の小しず(西田尚美)に一旦預けるも泣いてしまう。ところが、安子に返すとすぐに泣き止むというシーンがありました。あれも芝居ではありません。ああいう場合、本当のお母さんに託しても泣き止まないことがあるのですが、彼女が抱き上げたらスッと泣き止んだ。るいちゃんも、上白石さんとの関係性をリアルなものだと感じていたんでしょう」
さらに、“10人の母”上白石にはこんな器用な一面も。和菓子指導の中西信治氏によれば、
「おはぎ作りの練習時間を2時間取っていたのですが、僅か30分足らずで習得されていました。包餡というあんこでもち米を包む作業が本当にお上手で。テンポがいい上、包み方も綺麗なんです。撮影後もさらに15個くらいサッと素早く作り、ご自身で作ったおはぎを食べていました(笑)」
橘家の祖父・橘杵太郎役の大和田伸也(74)も、上白石にメロメロのようだ。
「杵太郎があんこを作る際、炊き上がった瞬間に『ほっ!』と拳に力を込めるアドリブを入れたのですが、安子もあんこを炊く時にそのアドリブを踏襲してくれているんです。それがおじいちゃんとしては嬉しくてね……。杵太郎が亡くなる時、安子に『幸せになれ』と告げるのですが、萌音ちゃんを思って演じました」