きっかけは王族の奥様が始めた小さなパン屋
この「YAMANOTE」というパン屋は、一見、名前から日本企業のようですが、実は一部に日本資本が入っているだけで実質的にはアラブ人の企業です。そもそも湾岸アラブ諸国において外資100%で事業をするのは一部では可能ですが、業種は限られています。いまでも簡単に外資100%で事業ができるのは中東各国にある「フリー・ゾーン」と呼ばれる経済特区の中などです。これはかつての中国における深センや珠海のような外資導入の窓口となる存在と言っていいでしょう。
「YAMANOTE」の経営権はもちろんアラブ人側にあります。そして「YAMANOTE」の設立に関わり経営権を持っているのはドバイの王族です。
もともと「YAMANOTE」はスヘイル・アル゠マクトゥームというドバイの王族と、奥様ハムダさんの夫婦2人だけで2013年に日本式パン屋のスタンドを開業したことから始まりました。開業のストーリーをスヘイル氏とハムダさん、日本側のオーナー代理に聞いた話によると、最初は奥様のハムダさんの父親の投資会社の支援を受け、合わせて日本の商社の支援も受けて20坪程度の小さなスペースでパンを販売するところからスタートしました。パン作りのノウハウは、日本のサガミベーカリーより指導を受けたそうです。
実は、初期の計画では、お菓子やケーキ類を作ろうとしたのですが、原材料輸入が規制やコスト面から難しく、パンを作ることに切り替えました。開店当初に販売していたのがチーズクリームデニッシュ、さきほど紹介した焼きそばパン、そして牛肉のソーセージパンだったそうです。