捏造された中間報告案が外部にそのまま流出
本多氏がこう質問したのには、理由があった。
〈たとえば性交同意年齢を16歳未満に引き上げた場合、この4月から18歳成人であるから、18歳と15歳による恋愛に伴う性交でも、18歳が例外なく犯罪者となってしまう。私はここには「例外規定」が必要だと考えていたのだ。
ただ低年齢の場合、恋愛だと思いこまされているだけで、あとで被害に気付くことも多い実態がある。「恋愛」を犯罪の言い訳にさせてはいけないとの指摘もあった。私はそうした意見も理解した上で、なんとか例外を検討できないのかと考えていたに過ぎない。〉
ところが、WTから24日後の6月3日、本多氏はWTの中間報告案を読んで驚愕する。
「50歳近くの自分が14歳の子と性交したら、たとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい」と本多氏が発言したことになっていたからである。
〈私は驚き、「こうした発言をした記憶はない」「音声データを確認させてほしい」「もしもこうした発言をしていたならば、誤解を招く表現なので撤回する。中間報告案から削除してほしい」と訴えた。
しかし寺田座長は、「発言は事実なのでそのまま記載したい」と主張した。一方で他の議員からも「誤解を招く表現なので削除すべきだ」との声があがった。
結局、この発言は翌6月4日のWTに提出された中間報告書案では、棒線で「見え消し」にされ削除された。だが、前日に一斉メールされていた文章がそのまま外部に漏洩し、ネットニュースとなったのだ。〉
福山幹事長が「認めて謝罪」を提案
バッシングが続く中、発言をした覚えのない本多氏は「音声データを確認させてほしい」と強く党に要求した。しかし……。
〈音声データについては顧問弁護士が党職員に聴取したが、「(音声データの)有無が不明」、「存在しない」、「存在するが聞かないほうがいい」などと回答が二転三転していたという。〉
そんな中、立憲民主党の福山哲郎幹事長が本多氏に提案したのは、「発言」をそのまま認めて謝罪する、というものだった。
〈私は動揺した。発言した覚えもなく、音声データの有無さえ不明のまま、「発言」を認めることなどできないと思った。しかし福山幹事長はこう言った。
「言った、言わない、の議論になれば、あなたが不利だよ」〉
心理的に動揺した本多氏は、した覚えのない「発言」を認め、謝罪することになる。このときの心境を、本多氏はこう振り返る。
〈冤罪事件で、やってもいない犯罪、まして殺人などを自白してしまう状況がリアルには理解できていなかったが、まさに自分がそうした状況に陥っていたのだ。今思えば穏便にことを収めようと事実でない「発言」を認め、さらに政治家として説明責任を果たす機会や義務を放棄したことは、私の過ちであり反省している。〉