5月17日、18日は沖縄セルラースタジアム那覇でライオンズ対ホークスの試合が行われた。両チームそれぞれ沖縄出身選手も在籍しており、地元ファンが多数駆け付けた。17日はライオンズが與座海人投手、ホークスが東浜巨投手と沖縄出身投手同士が先発し、盛り上がった。さらに、與座投手と東浜投手は沖縄尚学高校の先輩後輩だ。本人たちはもちろん、沖縄のファンにとっても夢のあるマッチデーになったのではないか。素晴らしい投手戦を演じた。
テレビ中継を見ていても、沖縄の野球熱の高さを感じた。地元出身選手がマウンドに上がったり、打席に入ったりすると、盛り上がりは最高潮に。沖縄出身の選手にとって、地元での試合に出場することが非常に特別だということがよくわかる。
「じいちゃんも観に来るから、ホームランかち込もうって思ってたんですけど……」
そんな中、まさかの故郷凱旋直前に2軍降格となってしまったのがリチャード選手だった。皮肉にも、チームが那覇入りするその日に出場選手登録を抹消された。当然、悔しい気持ちでいっぱいなはずだ。家族、親戚、友人らのためにチケットも大量に購入していた。みんなもリチャード選手本人も故郷でのプレーを楽しみにしていた中での悲報。親族のグループラインで「ごめんね」とひとこと伝えるのが精一杯だった。「じいちゃんも観に来るから、ホームランかち込もうって思ってたんですけど……」とショックは大きかった。
17日、2軍は試合がなく練習日だった。リチャード選手は、時折チームメイトと談笑しながら練習に取り組むも、やはりどこか空虚感が感じられた。小久保裕紀2軍監督が、朝の全体集合の際、「リチャード、沖縄行けなくてしんみりしてるから、みんな優しくしてやってや~」とイジって笑いに変えてくれた。気に掛けてもらい、リチャード選手も感謝していた。
今季1軍では8試合に出場し、18打数4安打。本塁打は0本だった。それでも、長谷川勇也打撃コーチに「良い打ち方してるよ」と声を掛けられた。現役時代から、リチャード選手の打撃を見守ってくれていた長谷川コーチの言葉は何より励みになっただろう。「長谷川コーチには“センターに打て”ではなく、“センターにぶち込め”と言われます。スイングは直すところないから、センターにぶち込みにいけと。そしたら、結果的にヒットになったり、角度がついたりするからと言われました」とリチャード選手。
試合では本塁打こそ出なかったが、練習でもいい打球が飛び、チーム全体で取り組んでいる2ストライクアプローチからも安打を放ち、一定の手応えも感じた。約2週間の1軍で、結果だけ見ると確かに物足りない数字だが、「これでいこう」という自身の軸になるものは見つかったという。
先週11日の試合では、沖縄尚学高校の先輩である東浜巨投手がノーヒットノーランを達成した。その試合で三塁手としてスタメン出場したリチャード選手だったが、ここでも嬉しさと悔しさを同時に味わった。
「巨さん、凄かったです! 僕も9回まで行きたかったです……」
先輩の好投に胸が高鳴った。毎イニング終わるごとに行っていたハイタッチも、ノーヒットだと気付いてからは、行けなくなってしまったという。先輩の偉業を隣で支えるんだと集中してグラウンドに立っていたが……9回は“守備固め”の野村勇選手と交代。監督も守備面の成長を認めてくれていたというから余計に悔しかった。「まだ信用がないってことですよね。そこも頑張っていかないと」と前を向いた。2週間の1軍で収穫もあったが、たくさんの悔しさを経験したリチャード選手は、ファームで再スタートを切った。