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ウルトラマン「最大の疑問」

「ウルトラマン」では「科学特捜隊(科特隊)」という対怪獣・異星人専門のチームが登場するが、ほとんどの場合は巨大な敵に対して歯が立たない。絶体絶命のタイミングで登場し、敵を倒すウルトラマンは「日米安保条約に基づき、外敵から日本を救いにきた米軍」であり、「無力な防衛組織=自衛隊」というわけだ。評論家の呉智英氏は「地球防衛軍は“ウルトラマンの傘”の下にある」としている。

 そして、「ウルトラマン」という物語の最大の疑問は「なぜ、ウルトラマンという異星人が、人間の味方となって戦ってくれるのか?」という作品の根幹に関わる問題だ。

「ウルトラマン」の第1話で、怪獣ベムラーを追って地球にやってきたウルトラマンは、ハヤタ隊員が操縦する科学特捜隊専用機と衝突してしまう。瀕死のハヤタに対してウルトラマンは「申し訳ないことをした」とわび、「私の命を君にあげよう」「君と一心同体になるのだ。そして地球の平和のために働きたい」と提案する。

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 要するに、ウルトラマンが地球にとどまっているのは、自らが起こしてしまった「人身事故」の被害者に対する償いのためであり、地球のために戦うのは、そのついでのことに過ぎない。ウルトラマンの戦いは、まったくの「無償の奉仕」なのだ。

「シン・ウルトラマン」の宣伝コピーは「空想と浪漫。そして、友情。」だ。ビジュアルイメージ(宣伝ポスター)には「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン。」というオリジナル版「ウルトラマン」最終回での言葉が添えられている。「ウルトラマンが人間を守るのは、人間に対する友情からだ」ということが、作品の根幹にすえられるのではないか。

 そして、作品全体のトーンは、「ウルトラマン」という作品を企画した中心人物で、脚本のメーンライターとしても活躍した金城哲夫が理想とした「科学の力を借りて、世界中の人々が人種や考えの違いを乗り越え、互いに相乗的な関係を取り結ぶ」というコスモポリタン的な世界観を、現代に復活させるものとなるはずだ。「シン・ゴジラ」がそうだったように、庵野監督は過去の作品をリメークする際、オリジナル作品を大胆に換骨奪胎しつつも、「作品を観た人々が当時味わったであろう衝撃と興奮、感動」を現代によみがえらせようとするからだ。

脚本を書いた金城哲夫氏 ©共同通信社

メフィラス星人らの「再登場」

 オリジナル版「ウルトラマン」で人類に対する友好姿勢を装いつつ、「ニセウルトラマン」となって人間とウルトラマンの信頼関係にヒビを入れようとしたザラブ星人、地球人の少年に対して「永遠の命」と引き換えに「どうだね、この私に、たったひとこと、地球をあなたにあげよう、と言ってくれないかね?」と言葉巧みに誘惑するメフィラス星人らの「再登場」も予告されている。