2018年はアメリカ中間選挙の年である。中間選挙、特に大統領に就任してから最初の選挙となる1期目の中間選挙は、新大統領への期待が試される選挙であり、その後の政権運営に大きな影響を与える。
歴代の大統領は中間選挙で苦しんできた
2010年の中間選挙でオバマ政権は下院で過半数を失い、上院も共和党との議席差が縮まることで苦しんだ。ブッシュ政権は9.11翌年に行われた1期目の中間選挙は乗り切ったが、2006年の中間選挙では下院の多数を失い、上院では民主・共和両党が同数となる結果となった。1994年のクリントン政権は上下両院で多数を失い、その後の政権運営が厳しくなった。
では、トランプ政権の中間選挙はどのような結果をもたらすであろうか。その予兆とも言えるのが、12月12日に投開票が行われたアラバマ州上院補選での共和党の敗北だった。共和党が予備選で元州最高裁判事のロイ・ムーアを選出し、民主党のダグ・ジョーンズと争った選挙だが、選挙戦の最中に「ムーアが過去に14歳の少女と関係を持った」という大きなスキャンダルが発覚して、圧倒的有利とみられていたムーアが敗れるという波乱になった。
波乱のアラバマ上院補選から見える三つのトレンド
アラバマ州はいわゆる「赤い州」、つまり共和党の強固な地盤であり、スキャンダルが出るまでは70%の確率でムーアが勝利するとみられていたが、それでも敗れたことから三つのことが読み取れる。
一つは女性スキャンダル、とりわけアメリカで社会的な力を持つようになった「MeToo運動」が選挙に与える影響である。2017年のTIME誌の「今年の人」の表紙を飾ったのは「Silence Breakers(沈黙を破った人たち)」という、過去の性的暴行を告発する女性達であった。ハリウッド、ジャーナリズム、経済界、そして政界などで、過去の性的暴行の告発を受け、辞任に至ったケースが数多い。ケンタッキー州議会の議員が、過去に10代の女性と性的関係を持った疑いを否定した声明を発表した後に自殺するという事件まで起きている。2018年の中間選挙でも、候補となった政治家が過去のスキャンダルを暴かれ、アラバマ州のような共和党の強力な地盤でも勝てない可能性が出てきた。
もう一つは共和党内の内紛である。ムーアが勝利した共和党の予備選では、他にも複数の候補が出馬しており、当初トランプ大統領はルーサー・ストレンジを支持していた。ストレンジはアラバマ州選出のジェフ・セッションズが司法長官となったため、その空席を埋める穏健保守の立場の代行議員だった。
そのままセッションズの空席を埋めるための補選に出馬し、手堅く予備選を勝つかと思われた矢先、かつてトランプ陣営の選対本部長を務め、ホワイトハウスに入って「闇の大統領」と呼ばれたスティーブン・バノンが共和党エスタブリッシュメントとの戦いを宣言。極端な言行が見られるムーアを推挙し、予備選でストレンジと争うことになった。
ある意味ではトランプ大統領とバノン元大統領顧問との代理戦争のような形になった予備選で勝利したのがムーアであった。この事実は、共和党内での路線対立があり、さらにはバノンが推挙する候補がしばしば過去に問題を多くはらむ人物である、という傾向も示している。
2018年の中間選挙で、こうした内紛が表面化し、各選挙区で共和党エスタブリッシュメント候補と反エスタブリッシュメント候補が対立するようなことになれば、選挙が波乱含みになる可能性がある。