本来ならば共和党に圧倒的有利な選挙だが
三つ目は本来共和党が圧倒的有利な中間選挙でもし負けるようなことがあれば、トランプ政権は危険な状態になる、ということである。中間選挙は下院の全議席と上院の3分の1の議席が改選となるが、上院では2012年に選出された議員が対象であり、このときはオバマ大統領の2期目の当選となった大統領選と重なっていたため、民主党が大きく勝利していた。今回の選挙では共和党の改選議席が8であるのに対し、民主党は23議席(+民主党系無所属2議席)の改選となる。そのため、共和党は8議席を守った上で民主党の議席をどれだけ奪えるか、という構図にある。
しかし、「赤い州」アラバマの上院補選に見られるように、トランプ大統領が現地に乗り込んでムーアの支持演説を行うなど、強力にてこ入れしたにもかかわらず敗北したことは、スキャンダルの影響だけでなく、トランプ大統領が持っていた選挙の強さ、動員力、共和党支持者への訴えかけの力が失われてきた兆しでもある。しかも、このアラバマ州補選で敗れたため、共和党は上院で51議席となり、与野党の議席差が極めて小さくなっている。
この状態で共和党が中間選挙で8議席を守れず、また民主党の25議席から奪うことができなければ、上院での多数派逆転すらあり得る。そうなればトランプ大統領による政権運営が一層難しくなるだけでなく、トランプ大統領の弾劾プロセスへのハードルも低くなる(弾劾は下院による弾劾訴追から始まり、その後上院の弾劾裁判へと移るので下院の結果次第でもある)。
2018年におけるトランプ政権の行方は、弾劾を巡る議論にも相当左右されるであろう。弾劾は合衆国憲法第2条第4節に示される「大統領並びに副大統領、文官は国家反逆罪をはじめ収賄、重犯罪や軽罪により弾劾訴追され有罪判決が下れば、解任される」という条件で発動される。
現在、トランプ大統領が選挙期間中、そして当選後にロシアと共謀したかどうかという疑惑をモラー特別検察官のチームが捜査している。この捜査は2017年後半になって選挙期間中にトランプ大統領の側近として仕えていたフリン元大統領安保補佐官がモラー特別検察官に協力し、情報提供をしているだけでなく、選挙期間中からトランプ大統領に仕えていたヒックス・ホワイトハウス広報部長も協力していると言われる。またモラー特別検察官はトランプ陣営の電子メールを数万通入手したとも報じられており、捜査は年末になって佳境に入っているが、これらの結果が何らかの形で2018年に出てくるであろう。