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「それで供養になるのか」

 ひとの行き着く先は墓である。今週号では大宅賞を2度受賞したノンフィクション作家・森健が「『墓じまい』最新事情ルポ『ビル型納骨堂』の利点と難点」を書く。

 記事によれば、ビル型納骨堂では遺骨をケースに収めてビル内の倉庫で保管し、参拝者が来るとロボットアームと配送ラックでそれを運んできて、お参りができる。

 こうしたビル型納骨堂が都心部で増え、「お墓の都心回帰」が進んでいるという。たとえば記事には新宿駅南口から徒歩3分のビル型納骨堂が紹介されている。おかげで気軽に墓参りできるようになり、おまけに花を用意する手間も掃除の苦労も不要となる。

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 テクノロジーを駆使した施設ということもあって、「それで供養になるのか」という向きもあろう。これに対して記事では宗教学者の島田裕巳が反駁している。墓石のあるお墓に遺骨を入れるのは明治以降のことで、それ以前は位牌だけであったと。

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ヤクザ墓ビジネス脱税事件まで

 こうした施設が急増中だとはいえ、まだ全国に六十箇所だそうだ。そのうちのひとつが先月話題になった。

 それは大阪のビル型納骨堂を舞台とした脱税事件である。この件で山口組の直参組長らが背任の容疑で逮捕されたのだが、面白いのがこの組長、ビル型納骨堂にかかわる特許を持っていたのだ。事件を伝える記事にはこうある、「特許権は山口容疑者が17年に出願したもので、納骨壇の画面に遺影が表示される装置だったが22年に失効しており、無価値だったという」(注)。

 カネ儲けに目端が利くのがヤクザとはいえ、12年前の2005年にビル型納骨堂のハイテク技術の特許を取得までしているのだから、「さすが」とついおもってしまう。そんなビル型納骨堂は現在、「数十億~百億円もの金が動く新興ビジネス」だと森は指摘している。

(注)産経新聞2017年11月18日