1ページ目から読む
2/3ページ目

球団は投手断念も想定

 8月24日、敵地ヒューストンでのアストロズ戦前に大谷は外野と一塁で守備練習を行った。そこまで打率1割8分1厘と指名打者(DH)としても不振だった。マドン監督(当時)は、この守備練習の意図について、大谷の卓越した走力や肩を守備に活かせないのは惜しいとした上で「若いのに打撃だけでは退屈かもしれない。守備は打撃にも役立つ」と表向きにはポジティブな理由を挙げた。

 しかし、それは建前だった。大谷はこの年、既にDHだけで試合に出場していた。守備に就かないDHは、他の野手よりも打撃成績で高い数字が求められる。

「エンゼルスでは、大ベテランのプホルス(現カージナルス)を筆頭に、守備に難があったり年齢的に休ませたかったりで、DHで使いたい選手がいても投手を兼ねる大谷の負担軽減のため使えませんでした。大谷が好調なら別ですが、打率1割台でDHの枠を使い続ければ、たとえ球団や監督が許したとしても、特別扱いとなって他の選手との間に不協和音が生まれかねなかったのです」(エンゼルス担当記者)

ADVERTISEMENT

©️文藝春秋

 批判をかわすためにも、大谷はプホルスの定位置の一塁のミットを手に、守備練習を続けたというわけだ。実際、米メディアは、盛んに二刀流の限界説を書き立てた。シーズン終了まで実際に守備につくことはなかったが、

「2021年を見据えた処置でもありました。20年のように投打で不振ならDHを返上させ、(日本時代に経験がある)右翼とかで守備に就かせることもチームは想定していたと思います。右肘の手術を受けた時以上に、二刀流で続けられるかどうか、一番危うい時期でした」(同前)