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高木 そうですね。それもありますが、何よりこの猫たちがかなり仲のいい「顔見知りの猫集団」なんだなという印象が強いです。知らない猫同士だとこんなことは絶対にできないし、お互いに接近することも難しいですからね。こういう距離感でいられるというのは関係性がだいぶ深いんだろうなと思わされます。

ペットの猫が画面に表示される“ゲーム猫”に反応する行動の意味とは?

――『Stray』はゲーマーや猫好きからだけでなく、現実の猫たちからの反響も大きいようです。こうした動画をネットでいくつか見つけることができました。

ツイッターより

高木 猫は個体によってテレビに反応する子/しない子がはっきり分かれますが、この子はテレビが好きなようですね。

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 また、反応する対象にもかなり幅があって、お相撲さんに反応する子、気象予報士が手に持っている棒の動きに反応する子などなど、いろいろいますが、この子は「猫の形」に反応する子だなというのもわかります。画面が全く動いていないときも茶色い猫をさわりにいっているので、動きよりも形に敏感なのだと思われますね。

――この猫ちゃんとしては「そこに猫がいるのに触れなくて不思議!」みたいな心理なのでしょうか。

高木 いえ、2Dと3D(画面内と現実空間)の違いはおそらく猫も認識しているはずなので、「触れないとはわかっているけどつい反応しちゃう」みたいな感じかなと思います。

――ちゃんとわかっているんですね。

高木 そうですね。まだ論文にはなっていないのですが、同僚がまさに実験を進めていました。猫の前に滑り台を設置してオモチャを転がすのと、滑り台にオモチャを転がしている映像を見せるのとでは猫が反応する(オモチャを追いかける)頻度に違いがあるかどうかを検証する実験です。

「猫ならでは」のアクションがゲームの随所に織り込まれている。そのウィットに富んだ手つきと、再現度の高さが本作の大きな特徴だ(画像はPlayStation公式サイトより)

 結果としては、リアルの方が高い頻度で反応するけど、映像にも十分反応するといったもので、おそらく人間と同じように2Dの3Dの違いは分かりつつ、2Dは2Dで楽しんでいるということじゃないかなと思っています。