「統一教会の歴史は岸家、安倍家を抜きにしては語れない」
ジャーナリストの森健氏は、「安倍元首相暗殺と統一教会」(「文藝春秋」9月号掲載)のなかでこう書く。そして旧統一教会の政治団体「国際勝共連合」会長の梶栗正義氏が、安倍氏と会食した際、「教祖文鮮明と岸信介」「安倍晋太郎と梶栗玄太郎(正義氏の父)」「安倍晋三と自分」の写真を見せながら、「これは3代のお付き合い、3代の因縁である」と教会の日曜礼拝で話したというエピソードを紹介している。
だが、安倍氏と統一教会との関係は「3代の因縁」ばかりではなかった。梶栗氏は「この8年弱の政権下にあって、6度の国政選挙において私たちが示した誠意というのも、ちゃんと本人(安倍)が記憶していた」とも語っており、選挙での協力が安倍元首相との縁を深めたことを認めていた。
ただ、安倍元首相が一貫して統一教会と親密だったわけではない。
〈この若き政治家(安倍氏)に対し、統一教会側は当初手ごわい印象をもっていた。古参の幹部が振り返る。
「岸先生のお嬢さん(洋子氏、安倍氏の母)から注意されていたようなんです。またご本人(安倍氏)も『自分はあまり関わりたくない』と仰っていた。霊感商法で叩かれた後は祝電などお願いしても打ってくれませんでした。それでも北朝鮮の拉致問題などもあり、我々とは仕方なく関わってきたんです」〉(森氏の記事より)
安倍元首相と統一教会の関係が深まった経緯
では、なぜ両者の関係は深まったのだろうか。
2009年に統一教会は「新世事件」によって最大の危機に陥る。霊感商法に捜査のメスが入り、会長が辞任に追い込まれたのだ。森氏はこう記している。
〈この事件によって統一教会は二つの点で大きな方向転換を余儀なくされた。一つは霊感商法の見直し。もう一つは政治家との関係性の強化だ。
全国弁連の弁護士渡辺博は7月12日の会見の際こう指摘していた。
「後に統一教会の機関紙で、統一教会の責任者が登場して、『政治家との絆が弱かったから、警察の摘発を受けた。今後は政治家と一生懸命つながっていかないといけない』と語った。それが彼らの反省点でした。我々が国会議員に『統一教会の応援をするのはやめてください』と呼びかけている理由もそこにあります」